アドベンチャー・カナダ社のクルーズ船が北極圏を行く ©Jerry Kobalenko
アドベンチャー・カナダ社のクルーズ船が北極圏を行く ©Jerry Kobalenko
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 「観光の力」によって自立の道を目指す、カナダの先住民イヌイットの挑戦。その手助けをしているのが「アドベンチャー・カナダ」という観光事業者だ。同社が目指すのは、「リジェネラティブ・トラベル(再生可能な旅)」。観光はどんなに配慮しても地域に一定の負荷をかけてしまうが、リジェネラティブ・トラベルではその負荷以上のものを地域にもたらすことによって、地域をより良く変えていく。地域を守り、持続させようとする「サステナブル・ツーリズム」のさらに一歩先を行く考え方だ。

 1991年に初めてイヌイットの集落ケープ・ドーセットへのクルーズを運航してから30年余り。アドベンチャー・カナダはイヌイットと信頼関係を築きながら、クルーズ船観光を成長させてきた。CEOのシーダー・スワンは、リジェネラティブ・トラベルを実現するためには、「良き旅人」を送客することが肝要だと考えている。

 「そこに暮らす人と出会い、共感によってつながることで、旅人は世界の見方や考え方が変わるような体験をします。そんな旅人は、その地域に経済的な貢献をするだけでなく、旅を終えた後もその地域の支援者となりアンバサダーとなります。観光によって地域が良くなっていくのを目の当たりにするたびに、大きなやりがいを感じるのです」

 「良き旅人」を送客するため、アドベンチャー・カナダは様々な配慮をもって事前の準備をする。ケープ・ドーセットなどイヌイットが暮らす極北の地域は、南の街とは文化も環境も大きく異なるため、まずは旅行者にその違いを尊重してもらう必要がある。旅行の募集では、アドベンチャー・カナダの価値観や旅の目的を伝え、賛同してくれる人に呼び掛ける。異文化に興味を持ち、違いに心を開いてくれる人たちだ。そして、出発前から訪問先のコミュニティーについて理解を深めてもらえるよう、コミュニケーションを図る。ケープ・ドーセットであれば、現地のアートを紹介する機関誌なども送って読んでもらう。

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