第6回 日本とドイツではなぜコアな理系の女性が極端に少ないのか

 とはいえ、やはり、構成員の半分が女性というのは、例外中の例外だし、そもそも、物理学科全体でみれば、女性が全体の2%しかいないわけだ。いくらなんでもこれは低すぎる。数学や物理が好きでまた得意な人たちは男女を問わないし、その男女の比率は決して「100人中2人」ではないことはぼくは体験的に知っているのだけれど、にもかかわらず、なぜこういう頻度になるのだろうか。

「物理学科の女性が2パーセントとか、やっぱりありえないですよね。コップの中の冷たい水が何もしていないのに急に沸騰しないのと一緒で、外的要因を加えなきゃありえません。もちろん、統計的にはいきなり水が沸騰する確率はゼロじゃないんですけどね」

 坂井さんは物理学科出身らしいたとえで、現状の「ありえなさ」を表現した。

 では、その時に働いている外的な要因とは、どんなことだろう。自然にしていれば、もっと男女比が半々に近くなるかもしれないのに、極端な偏りを起こしている力のことだ。

「親の刷り込み、社会の刷り込み、というのはあると思います。やっぱり小中高ぐらいのときから、『女子は文系』みたいな圧力がありますよね。『女の子はピンク色よ』っていうのと同じですよね。『女の子だから、まあ、短大に行けばいいんじゃない』っていう表現の仕方とかもまだ聞きます。でも、実際に、小さい女の子で、パズルが好きとか、乗り物が好きとか、普通にいますし、でも、他の女の子と人形遊びを一緒にしてらっしゃいとかって言われて、どんどん強要されると、そうしなきゃならないんだと思っちゃいますよね。算数や数学も、それと同じかもしれませんね」

 坂井さん自身は、前に紹介した子ども時代のエピソードからも分かるように、「女の子なのだから女の子らしく」というふうなことはあまり言われずに育ってきた。世間の類型よりも、内からあふれるものに忠実でいられた。

「うちの両親も、女の子だからこうあるべきとか言う人たちではなかったので、それは大きかったと思っています。小学校もすごく公平な環境でしたし、中高は女子校でしたけど、そこも理系の子が多かったんです。とはいっても、その大半は医学・薬学系に行きなさいって言われてたんですね。これは、完全に親ですよね。結婚した後に子どもを産んでも復帰できるためには資格が欲しいと。だから、どうせ理系に行くんだったら医師や薬剤師だろう、と。でも、その中で私はそういうことは特に言われなかったので、好き勝手にやっていました」

 ただし、技術者だった父親に、就職上のアドバイスをもらったことを坂井さんはよく覚えているという。