坂井南美さんは、生まれたばかりの赤ちゃん星、原始星の化学組成、特に有機分子を観測する中で、数々のブレイクスルーを成し遂げてきた。

 冒頭で、「本音は、(宇宙の)はじまりから全部理解したい」けれど、「私たちの世界の物質的な起源、生き物が誕生するような環境がどうしてできたんだろう」「原子から分子ができて、複雑な分子ができて、いつか生命になったという化学組成の上での起源が知りたい」というモチベーションで、原始星の化学組成をさぐる電波天文学の世界へと足を踏み入れた。

 では、そのような関心はどんなふうに培われて、深められてきたのか、最後になったけれど、研究に至る個人史をうかがっておきたい。

星や惑星の形成を研究する坂井南美さん。山中伸弥京都大学教授と天野浩名古屋大学教授もノーベル賞を受賞する前に選ばれた、文科省の「ナイスステップな研究者」に今年選出された。
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「私、いわゆる天文少女ではなかったんです。だから、『星座の何座はどこにある?』って聞かれても、そりゃあオリオン座ぐらいは知ってますけど、分からない方が多いです」

 まずはそんなふうに笑いながら言った。

 天文学者や宇宙物理学者は、古き良きプラネタリウムで解説されていたような星座の知識は、不必要というわけではないけれど、不可欠というわけでもない。よく知っている研究者もいれば、それほど関心がない研究者もいる。

「ただ、星空を見るのは好きで、というよりも、とにかく外で遊ぶことが好きだったんですね。小学校がわりと自然豊かなところで、クヌギの木とか、いっぱい木がある環境でした。そこで、木登りして風を感じてみたり、空を見ながら居眠りしたり。あと、虫も好きで、セミ捕りどころか、カブトムシを筆箱の中で飼ってたり、ダンゴムシを入れてたりして、先生に怒られてました(笑)。そんな中で、なんでこんなすごい自然の世界が、でき上がってるんだろうという興味が生まれたんですよね」

 東京都内ではあるそうだが、かなりワイルドな小学生時代だ。そういった経験を通じて、この世界が、理屈抜きで「素晴らしい」ものだという確信を培うことができたのではないかと推察する。

 と同時に、すでに天文学への興味の萌芽はあったそうだ。

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