第3回 一挙に50天体を比較、原始星の違いの謎に迫れるか

 もっとも、ALMAを使う提案書には、どんな予測を立てて、何を見ようとしているのかはすでに書かれているわけで、坂井さんの考えた見通しなら今でも教えてもらうことができる。きわめて簡単に述べると──

「まず私たちは、天体の誕生した場所を気にしているんです。つまり、分子雲の中の真ん中のほうでできたものか、分子雲の端っこでできたものかが大きな違いを生む可能性があると考えています。分子雲の端っこには外からの光が入りやすくて、紫外線などの影響があって、中の方は紫外線が入りません。その違いが効いてくるという予測です」

 細かいことは省くけれど、端の方は炭素鎖分子のような不飽和な有機分子ものが多く、分子雲の真ん中の方でできた原始星はギ酸メチルのような飽和した有機分子が多い、という予想だ。それが正しいかどうかは、遠からず明らかになる。

 ただこういう話を聞いていてふと疑問に思ったのは、化学組成の多様性を考える時に、有機分子が飽和しているか不飽和かという対立軸だけでいいのだろうか、という点だ。それは、坂井さんたちの観測で焦点が当てられてきたポイントではあるけれど、素朴に考えると、別の対立軸もあってしかるべきなのではないだろうか。

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「当然そこにも興味があって、調べようとしています。観測の周波数設定は、1つの範囲だけなんですけど、その中にいろんな分子のスペクトル線が入るように選びました。生命の起源にかかわる話としては、酸素と炭素はまず考えなければならないところですが、他に窒素や硫黄も見たいですね」

 以上が、原始星の化学組成の違いの起源をめぐる研究のおおまかな説明だ。

 それでは、原始星の段階での違いが、その後どのような違いに発展していくのだろうか。原始星の「その後」というのは、ぼくたちの太陽系のようなものがどうやってできてきたのかという話にも直接つながる話だ。

「その先を見ようと思ったら、分解能をもっと高くするとか、あるいは、もうちょっと進化の進んだ天体を高感度で観測することが必要で、それぞれ進めています。今、遠心力バリアのところまで有機分子がみつかると説明しましたが、それがのちのち惑星が形成される時まで残っているのか、残っているとしたら、どういう組成でどれほど複雑なものまであるのか知りたいですね。そこまではたぶんALMAで観測できると思っています」

 ただ、ここに来て、少しばかりハードルが高くなっている面がある。