第3回 一挙に50天体を比較、原始星の違いの謎に迫れるか

 理化学研究所の「坂井星・惑星形成研究室」の坂井南美さんは、まさに研究室の名の通り、星や惑星がどのようにできるかを観測に基づいて研究する天文学者だ。これまでの研究で、赤ちゃん星である「原始星」の周りの有機分子には、様々なパターンがありうることを見出し、その研究の中から、原始星の周りの円盤の成り立ちについても新しい知見をもたらした。

 では、今後、どんな方向に研究を進めていくのだろう。坂井さんの関心の中心は、我々がいるこの生命あふれる世界がどんなふうに出来てきたのか、化学物質のレベルでの起源を問うことだというから、きっとそこに焦点がぎゅっと絞られていくのだろうか。

理化学研究所で星・惑星形成の研究室を主宰する坂井南美さん。今注目の天文学者だ。
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「まず、原始星の化学組成の違いが何に由来するかを知りたいんです。これは、いろんな天体を観測しないと見えてこないんですよね。原始星が誕生する母体となる、星間分子雲、ガスやチリからなる大きな雲みたいなものがあって、その中のいろんなところで星が誕生していきます。それで、同じ分子雲の中にある原始星を全部観測してあげて、それぞれどんな化学組成をしているのか統計的な方法で調べてあげると、どういうことが影響するのかが見えてくるはずです。ペルセウス座の分子雲にある50天体ぐらいをすでにALMAで観測して、去年の11月末にデータが届きました。提案から3年半、待ってようやく手に入れました。研究室のスタッフ総出でデータ処理を済ませて、さあ、今から本格解析していきましょうというところです」

 データが届いてから、半年以上もかけて解析の下準備をするというのが印象的だった。そのことを述べると、坂井さんは床に置かれた黒い筐体を指差した。

「これ50テラバイトのストレージなんですよ。50テラのストレージと、バックアップが2つ。プロジェクトごとに分けて保管しています。天文台の装置につないでやることもできるんですけど、やっぱり自分の手元にあったほうが圧倒的に速いので」

 ALMAは複数のアンテナをひとつの望遠鏡に見立てる干渉計なので、ただでさえデータ量が多い。この観測でも1天体あたり数百ギガバイトに達するそうだ。それをパソコンの中で展開して強度や位相を較正していくとすぐにテラバイト規模になってしまう。そして、較正が済んだら、それぞれの天体、それぞれの分子ごとに切り分けて画像に変換する解析を行い(縦横の2次元の情報)、そこにドップラー効果で分かる速度の情報を加えた3次元の「キューブデータ」という形にして、やっと解析の準備が整った段階だそうだ。その成果がはっきりと分かるには、まだ時間がかかりそうだ。

写真の左上に少しだけ見えるのが床に置かれた50テラのストレージ。デスクの上にはALMAなどのデータが入ったポータブルハードディスクも。1天体だけでも数百ギガバイトにものぼるデータを、これから50天体分も解析するのだという。
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