ここで印象深かったのは、こういった職種の指定や最長の期間などが、法律で決まるのではなく、省令でとてもカジュアルに変更されてきた、ということだ。つまり国会で議論されることなく、省庁レベルで自由に決めてしまえるような話になっている。その結果、企業側から見た使い勝手がどんどん「改善」されることになったのではないかと批判的に見ている人が多い。

「労働力不足の供給源、しかも安価な供給源です。転職ができないわけだから、最長5年、安定的な労働力供給になります。技能実習生を雇用せざるを得ないようなところって、日本人を雇ってもすぐ辞めちゃうところが多い。そうすると、結局はまた募集しなければならなくなって、そういった募集コスト、採用コストも非常にかかってしまうんだけども、技能実習生なら安価で安定的です。基本的に20代で、若くて無理がきくので、長時間労働も大丈夫だろう、って雇用主にとってみれば、非常に使い勝手がよい制度になっていきました。一たびそれに依存してしまうと、賃金水準が抑えられるので、ますます日本人が働こうとしない職場になっていきます」

技能実習は「雇用主にとってみれば、非常に使い勝手がよい制度になっていきました」
[画像をタップでギャラリー表示]

 ここに来て、ずっと問題にされる低賃金労働などの問題の背景が見えてきた。

「日本語がほとんどできないので、声を上げることがなかなか難しいですし、また多くの実習生が来日に当たって借金をしてくるので、借金も返さなければいけません。だから途中で声を上げたら帰されてしまうかもしれないと、『声が奪われている』のが技能実習生の特徴的な状況です。声を奪っているからこそ、雇用主は安心して劣悪な状況に押し込めておける、と」

 悪い方に転がり始めれば、いくらでも転がっていってしまうような方向付けが制度自体の中に内蔵されている。そこには、中小零細企業に技能実習生を斡旋する監理団体の存在も大きいという。

「中小零細企業は、監理団体を通じて技能実習生を受け入れます。わかりやすく言うと、企業に代わって実習生の支援を行うのが監理団体で、企業は実習生1人あたりにだいたい月3万円くらいの管理費を払うんです。もしも100人いれば、それだけで毎月300万円で、実習生を受け入れれば受け入れるほど、監理団体の収入は増えます。農家さんに普及していったのも、監理団体が営業をかけて『この制度を使うといいですよ』っていうふうに誘ったことが大きい。で、一たび使うと、確かに便利なので、依存していってしまう仕組みが構造的に組み込まれています。グローバル化の中でコスト削減が、企業にとって非常に深刻な課題になっているのとリンクする形で、受け入れが拡大していきました」

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る