手前の『外国人労働者受け入れを問う』(岩波ブックレット)は2014年に書かれた鈴木さんの共著で、外国人労働者問題の入門書として評価が高い。
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「私は、在留資格を『定住型』と『還流型』という2つのグループで捉えています。『定住型』というのは、在留期間の延長が可能で、家族の帯同も認められているような人たちです。一方で、『還流型』、技能実習生が典型ですけど、最長の在留期間が定められていて、単身でしか来られず、家族は母国で形成してくださいっていう場合です。そういった中で、私は『定住型』の人たちを、広義の移民として捉えています。すると、日本に暮らしている外国人の8割以上が移民なんです」

 日本で暮らす外国人は2018年末の時点で273万人だそうだから、その8割以上の234万人が、鈴木さんの定義の「移民」に相当する。かなりの数だ。

 さらに、こう続ける。

「どこまで入れるかなんですけども、私は、日本国籍を取得した人だって移民だと考えています。そうすると、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効以降だと、50万人以上の外国人が日本人になっていますし(すでに亡くなっている人もこの数に含まれていますが)、また、日本人と外国人の両親から生まれた子どもたち、つまり『ダブル(ハーフ)』の子どもたちも日本国籍を持っているので、そこまで含めて考えています。そうすると、この社会には、すでに300万人以上の移民が暮らしていることになります。なぜ移民の範囲を広く捉えているかというと、今この社会に、多様な人たちがいるということを知るのが大事だからです」

 なるほど。ぼくは「これから移民が増えるかも」という気持ちで話を聞き始めたわけだが、鈴木さんは「すでに増えている」「すでにたくさんいる」というのだ。

 ぼくたちは「日本は単一民族からなる社会だ」というふうに思いがちだ。「単一民族はなんぞや」というツッコミはありつつも、なんとなく均質な人たちに囲まれていると思っている。

 しかし、今この時点でも、同じ社会に暮らす人口の数パーセントにあたる人たちが、外国にルーツを持った「移民」だとしたらどうだろう。それはつまり、ぼくたちの社会が実は結構多様だということでもある。

 鈴木さんとの対話は、こんなふうに、まずは「実は多様な日本の社会」という部分から始まったのだった。

つづく

鈴木江理子(すずき えりこ)

1965年、愛知県生まれ。国士舘大学文学部教授。博士(社会学)。NPO法人移住者と連帯するネットワーク(移住連)副代表理事。2008年、一橋大学大学院社会科学研究科社会学博士課程修了後、国士舘大学文学部准教授などを経て2015年より現職。『日本で働く非正規滞在者』(明石書店)で平成21年度沖永賞を受賞したほか、『外国人労働者受け入れを問う』(岩波ブックレット)、『移民受入の国際社会学 選別メカニズムの比較分析』(名古屋大学出版会)、『移民政策のフロンティア 日本の歩みと課題を問い直す』(明石書店)、『移民・外国人と日本社会』(原書房)など共編著書も多数ある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『天空の約束』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からのスピンアウトである、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた近著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)で、第34回講談社科学出版賞と科学ジャーナリスト賞2018を受賞。ほかに「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)もある。近著は、世界の動物園のお手本と評されるニューヨーク、ブロンクス動物園の展示部門をけん引する日本人デザイナー、本田公夫との共著『動物園から未来を変える』(亜紀書房)。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。

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