少しでも関心があって「外国人材」の問題を追っている人には呆れられるかもしれないが、ぼくはこの時点ではとても粗末な認識しか持っていなかった。とにかく「単純労働者」の本格的な受け入れとして、新たに「特定技能」の制度ができて、これからは、以前にまして「外国人材」が日本にやってくるのだろう、という理解だ。

 ということは、日本も「移民社会」になっていくのだろうか。たくさん人が来るのだから、自然に考えるとそうなる。

 しかし、よくよく調べると、政府は繰り返し「移民政策ではない」と主張しているようだ。多くの外国人に門戸を開きつつ、それが「移民政策ではない」というのはいかなることだろうか。もやもやする。

 そんな折、国士舘大学文学部教育学科の鈴木江理子教授に話を聞く機会を得た。鈴木教授は、まさに「日本の移民政策」の研究者として、多くの著作・論考をものしている。また、「移住者と連帯する全国ネットワーク」というNPO法人の副代表理事をつとめ、現場での経験も深い。著作をいくつか読んだところ、まさにぼくが疑問に思っていたことが広く深く考察されており、ぜひお話を伺いたいと思った。

「日本の移民政策」を研究してきた国士舘大学文学部の鈴木江理子教授。NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の副代表理事もつとめ、外国人の支援も行っている。
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 国士舘大学のキャンパスは、東京都世田谷区の行政の中心である区役所のすぐ隣にある。鉄道ファンに人気のある東急世田谷線(いわゆる「軌道線」だが、現在は路面ではなく専用軌道を走る)の世田谷駅から歩くと、区役所の前を通り過ぎて徒歩1分か2分、といったところだろう。

 鈴木さんの居室は、1階にアトリウムを持つ今風のビルの上階だ。古くからの住宅や寺社が立ち並ぶ、とても「日本的」とも思える風景を見下ろしつつ、まずは「研修」「技能実習」「留学」「特定技能」といった概念のレベルから、頭がこんがらがっていると正直に伝えた。

「たしかにこの問題はマニアックなんですよ」と鈴木さんは笑いながら応えた。

「この前も私が共同代表をつとめた全国フォーラムにご登壇くださった外国にルーツをもつメインスピーカーの方たちが、『専門家しか語れないのはよくない』と言っていました。『実は、身近なことなのに、ふつうの人が語れないっていうのはよくないし、身近に感じたことを口にできるほうがいいんだ』って言われたのが、すごく頭に残っています。確かに、専門家がちょっとマニアックになりすぎているなって思っていたところです」

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