断片的な化石だったとしても、そこにあらわれる特徴からどんなことを言えるか考えるトレーニングをこの時期の真鍋さんは積んでいたと言える。その延長上に日本の甑島の「北米的な」ケラトプス類の研究などがあることは前にも述べた。そして、もうひとつとても興味深い事例が、真鍋さんが帰国して科博に勤務した90年代のエピソードとしてあるので、ここで紹介しておく。

 福井県の手取層群から出た小さな肉食恐竜の歯を、真鍋さんは独特の形状(断面がD字型になる)から、ティラノサウルス類ではないかと気づいた。当時、白亜紀前期のアジアからはティラノサウルス類は見つかっていなかったのでなかなか相手にしてもらえず、結局、論文が出たのは1999年だった。その後、中国でもティラノサウルス類が見つかり、今では白亜紀前期のアジアにはティラノサウルス類がいたことは当たり前になっている。それどころか、中国の遼寧省から発掘されたディロング(約1億2000万年前)のように羽毛を持ったものがいたこともわかり、大いに存在感がある。しかし、アジアで最初にティラノラウルス類が認識されたのが、日本のもので、また真鍋さんの目によって見出されたことは覚えておいてよい。

常設展のティラノサウルス・レックス。しゃがんでいるのはトリケラトプスを待ち伏せしているため。「恐竜博2011」で展示されたもので、当時の最新の研究成果にもとづき復元した骨格標本だった。ティラノサウルスも6600万年前に絶滅している。
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 オストロム教授のもとでこういった訓練を受けた真鍋さんは、さらに博士課程へと進む。今度は大西洋を飛び越えて、イギリスのブリストル大学だ。

「イエールのときの先輩が、イギリスのブリストル大学でポスドク(博士研究員)をすることになって、うちの後輩に日本人のこういうやつがいてこんなことやっているって売り込んでくれたんですよ。それで、後に僕の博士課程の先生になるマイク・ベントン教授が、当時メールが普及していなかったので電話をかけてきて、ブリストルに来ないかって言ってくれたんですね。テーマは、『収斂(しゅうれん)進化』です」

 マイク・ベントン教授は、前述の通り、色素を持つメラノソームを恐竜の化石の中に見つけた研究者の一人だが、もっと幅広く、様々な研究プロジェクトを走らせており、そのうちのひとつが「収斂進化」だった。

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