隕石の衝突で恐竜が絶滅したというのは、イメージの喚起力が強い魅力的な説だ。1980年にアルバレズ親子によって提唱された当初は、そのまま信じる研究者は多くなかったものの、その後、事情が徐々に変わってきたという。

 そもそも、そんな全地球的な影響を与えるような巨大隕石が本当に落ちたのだろうか、という点は、「イリジウムが見つかったから」というだけでは心もとないし、かりに本当に巨大隕石が衝突したのが事実だとしても、それが大量絶滅の直接原因だと言えるのか、という疑問も残る。

 1991年にメキシコのユカタン半島で巨大なクレーターが発見されたことから、全地球規模の影響を与えた巨大隕石の「実在性」は非常に確からしくなった。ならば、それが原因で恐竜が絶滅したとするには、どんなことを確認すればいいだろう。それまでは、恐竜化石の多様性は徐々に減少してきたと考えられてきたわけだけれど、実はもっとストンと急に減少していたのではないかと再検討する研究者たちがあらわれた。

 そもそもなぜ、「徐々に減少した」と考えられていたのか。

“科博の恐竜の先生”として知られる国立科学博物館の真鍋真さん。恐竜絶滅は真鍋さんが強く関心を寄せるテーマだ
[画像をタップでギャラリー表示]

「それは、恐竜の種数の変化に基づいています。恐竜の種数をカウントしてそれを縦軸に、白亜紀で最後から2番めの地質時代であるカンパニアン期と最後期のマーストリヒト期を横軸にしてグラフ化すると、カンパニアン期のほうが多様性が高くて、マーストリヒト期のほうが低いというのが、多くの研究者の理解、知識だったんです」

 種の数を多様性の指標にするというのはごく自然な考え方だ。でも、この場合、その尺度が違うのではないかと一部の研究者たちが考えるようになった。

「つまり、種の数をカウントしても、形の多様性みたいなものがそれと一致してるわけじゃないということです。例えば、角竜の角が何本はえるとか、フリルができるとか、口の先端部が広がるみたいなことを、種の違いじゃなくてどのくらい形態変化があったかみたいな観点から見直してみると別の議論ができます。あと、系統進化の中でどれくらい頻繁に形態的変化が起こっているかを見ながら、あるグループが形態的な多様化を起こしているかどうかを把握しようとすることも出来ます。そういったふうに、種数だけじゃなくて、形態的な多様化も1つの尺度として考察できないかっていうところにも広がりが生まれて行きました」

左上のトリケラトプスをはじめ、常設展にはさまざまな角竜の標本が展示されている。
[画像をタップでギャラリー表示]

書籍『NHKスペシャル 恐竜超世界』

最新の研究で明らかになったすごい生態を、超高精細な4KCG(コンピューターグラフィック)を基にした豊富なビジュアルで完全再現します。

  • アマゾン
  • ナショジオストア

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る