第3回 恐竜絶滅の謎を解く鍵と、その意味とは

 古生物学では入手できるのが基本的に化石だけだから、種を決めたり、多様性を議論したりする時の情報源は、骨や歯などの形態がほとんどだ。ここでは、骨の形の違いをそのまま議論するのか、いったん「種」という分類のレベルに落とし込んで整理整頓した上で議論するのかで、結果がかなり違ってくると明らかになったという。その際、ともに「形を見る」のだから、これまで系統解析のために使っていたデータを共用できるそうだ。尺度の違いで結果が違ってくるというのが興味深い。

「もちろん、恐竜がすべてじゃなくて、プテラノドンなどの翼竜もモササウルスのような海生爬虫類も、アンモナイトのような無脊椎動物も、白亜紀末にはいなくなっているわけです。それらを見ていくことも大事で、やはり、どうも基本的には6600万年前でガクッと多様性が落ちたという傾向が強いとわかってきました。その時に、デカン高原をつくった火山活動は、300万年ぐらいの間に激しくなったり落ち着いたりっていうのを繰り返していたので、タイミング的に急激な変化を説明するには、隕石の衝突の方がもっともらしいというデータが増えて行きました。2010年に『サイエンス』にこれまでの総括的な論文が発表され、隕石衝突による急激な環境変化、多様性の急激な減少が白亜紀、そして中生代を終了させたというコンセンサスが形成されるようなりました」

 この論文の著者は、世界12カ国、40人以上からなるチームで、世界300カ所以上のK/Pg境界堆積物から得られたデータを検討した上で結論を導いた(筆頭著者はアメリカ・サンディエゴにあるスクリプス研究所の化学者、ピーター・シュルツ博士)。ここで詳しく紹介することはできないが、非常に影響力があったものだと聞いている。日本からも、現・東京大学大学院地球惑星科学専攻の後藤和久教授と、現・千葉工業大学惑星探査研究センターの松井孝典所長が共同執筆者に名を連ねている。

 さて、白亜紀末の大絶滅の主因はおそらく隕石の衝突だっただろうということをだいたいの研究者が合意したところで(もちろん、個々の論者で今も反対の人はいる。念の為)、新たな関心が研究者の間で生まれている。

 北米では詳しいことが分かってきたけれど、ほかの地域ではどうか、ということだ。まさに真鍋さんが本連載の冒頭で述べた、日本の白亜紀末の恐竜である、甑島のカモノハシ竜(ハドロサウルス類)の話などに通じる関心だ。