では、それをもって、「恐竜絶滅の原因は隕石衝突」と言い切ってよいのだろうか。

 今回は、真鍋さんにおさらいしてもらいつつ、考えていこう。

 まずは「隕石衝突説」のはじまりから。

国立科学博物館の真鍋真さん。「恐竜博2019」の監修者で、今回の特別展が生まれた背景を聞いた。
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「白亜紀の終わりに隕石が衝突したのではないかという説は、ウォルター・アルバレズと、父親のルイス・アルバレズ、いわゆるアルバレズ親子が1980年に提唱したものです。彼らは、中生代白亜紀と新生代古第三紀との境界、つまり、K/Pg境界の地層にイリジウムが急に増えるところがあるのを発見して、それを説明するには大きな隕石の衝突がもっともらしいとしたんです。実は彼らは大量絶滅の原因を探るというのではなくて、化石があまり出てこないような地層でも年代の経過がわかるような尺度を作ろうと、隕石の衝突に着目していました。隕石が降ってくるのはランダムだと考えられるので、隕石には含まれていて地表にはほとんどないはずのイリジウムを測れば、この地層のこの部分の時間経過は何百万年、というふうに言えるのではないか、と。でも、ちょうどK/Pg境界でイリジウムがあまりにも急に増えているところがあって、これはなんだろうということになったわけです」

 アルバレズ親子の「発見」は、多くの恐竜本で紹介される定番の物語だ。ただし、古い本では、K/Pg境界ではなく、K/T境界と表記されていることが多い。これはどういうことなのだろうか、一応、確認しておく。

「あ、それは同じものです。もともと、“T”っていうのは“Tertiary”、第三紀の頭文字です。第三紀は現在は古第三紀“Paleogene”と新第三紀“Neogene”というふうに大きく分類されなおされました。ならば、“Paleogene”の頭文字で“P”をとって、K/P境界になるわけですが、“P”はペルム紀の“Permian”ですでに使われているので、K/Pgとしているわけですね」

 こういう地質年代の再検討はしょっちゅうというほどではないにせよしばしば起こる。特に年代については、最新の方法でより信頼される数値が出てくるとどんどん変わっていく。ぼくが15年前、熱心に取材していた頃、白亜紀の終わりは6500万年前とされていた。しかし、その後、6550万年前になり、今では6600万年前が標準的に使われている。

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