第1回 日本の恐竜新時代が今始まっている!

 肉食恐竜、草食恐竜、哺乳類の先祖である哺乳類型爬虫類(単弓類)、おびただしい種類のトカゲなど、本当に多様な動物たちが見出され、当時のことを想像するだけでも楽しい気分にさせられた。他の地域ではすでに絶滅してしまっていた単弓類のトリティロドンなど、「ジュラ紀の生き残り」的な存在が見つかって、「残された者たちの楽園」といったイメージを思い描いたりもした。

「日本の手取層群の研究から分かったのは、ジュラ紀と白亜紀って全然違うように見られてしまうんですけども、丁寧に断片的なものも拾っていくと、そんなにシャープに変わるわけじゃなくて、動物相はオーバーラップしているんです。突然切り替わるわけじゃなくて、徐々に変わっていきます。それを論文として発表したところ、じゃあ、白亜紀最末期でも同じようなことをやったらいいんじゃないかと、ノースカロライナ州立大学(当時)のデール・ラッセルさんや、デンバー自然科学博物館にいた植物の専門家、カーク・ジョンソン(現在はスミソニアン自然史博物館の館長)さんなどが一緒にやろうと言ってくれて、それで、白亜紀末の研究も始めたんですよ」

⽩亜紀後期に繁栄した「むかわ⻯」が⽣きた恐⻯世界。「恐竜博2019」より。
⽩亜紀後期に繁栄した「むかわ⻯」が⽣きた恐⻯世界。「恐竜博2019」より。

 白亜紀末には大量絶滅があり、恐竜、翼竜、海の巨大爬虫類であるモササウルス類や首長竜といった脊椎動物だけでなく、アンモナイトのような無脊椎動物も姿を消した。その原因として、隕石の衝突が取りざたされるわけだが、では、その前後で、動物たちの多様性はどう変化しただろうかという問いの設定だ。隕石衝突のような一度の巨大イベントが絶滅につながったら、シャープに変化しているはずだし、もしも、じわじわと絶滅していったなら、多様性もゆっくり下がっていたはずだ。伝統的には「じわじわ」説が常識だったのだが、真鍋さんたちが日本のジュラ紀・白亜紀境界で行ったような研究方法で見たらどうなるだろうか。

 真鍋さんたちは、白亜紀最後期(マーストリヒト期)のヘルクリーク累層(アメリカのモンタナ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ワイオミング州などで見られる地層)から発掘された恐竜化石を網羅的に再検討し、小型恐竜の多様性が過小評価されていることを見出した。つまり、白亜紀再後期の恐竜が、考えられていたより多様だったということだ。従来の「じわじわ説」よりも、急激な減少説の方に親和性が高い結論だった。

 このあたりの研究が、真鍋さんの「白亜紀末」デビューに相当する。そして、その後の発展的な関心が「アジアの白亜紀末」なのだった。