天の川のコラボレーションも、絶景「秩父雲海」を楽しむ
標高500メートル前後の「美の山公園」(秩父市)や「秩父ミューズパーク」(秩父郡小鹿町)などは車で気軽にアクセスできることもあり人気だ。こうした場所から見下ろす雲海は山に囲まれた市街地を覆うように発生するため、夜には街明かりがうっすらと透ける。雲海の厚みによって色の見え方が変わり、“秩父レインボー雲海”とでも名付けたいところだ 。朝日や夕日に照らされて色づく雲海は多いが、夜景とのコラボレーションを楽しめるのは秩父ならでは。気象現象と夜景という人の営みが新しい風景美を織りなしている。
秩父雲海が魅力的なのは夜景だけではない。雲海が分厚い時には秩父公園橋の主塔がぽっかりと顔を出す「天空の橋」も見ることができるし、秩父を彩る紅葉や桜、雪など季節を感じられる風景とのコラボも実に見事だ。
雲海発生のメカニズム
冬の天気予報で「放射冷却」という言葉を耳にすることも多いだろう。夜になると、昼に蓄えられた熱が空(宇宙空間)へ逃げて気温が下がる現象だ。放射冷却によって地表付近の空気が急速に冷やされることで、水蒸気が小さな水の粒となって霧(=雲)となる。これを「放射霧」と呼ぶのだが、雲海はこの放射霧によってできたものだ。ちなみに雲も霧も水滴でできている点では同じだが、地面に接していれば霧、上空に浮かんで見えれば雲と呼び分けている。
雲海が現れやすい季節は秋、9月から11月。湿度が一定程度あり、日中と夜間の気温差が大きく、水蒸気が雲や霧になりやすいからだ。また、前日に雨が降っているとより水蒸気も多くなるため、好条件となる。そして当日の天気は晴れで、雲海を吹き飛ばさないような、風の弱さも大切だ。山に囲まれた盆地はこうした条件を満たしやすく、雲海の名所が多い。
雲海は、日が昇り、気温が高くなるとともにすーっと消えていってしまうので、撮影するなら未明から早朝が狙い目の時間帯。最近は、雲海予報を発表しているサイトやSNSなども出てきたので、地域ごとの予報をこまめにチェックするのもオススメだ。
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