「コロナ禍」はいつまで続く?:2022年終息説ほかいくつかのシナリオ

 属性ごとのRを別々に考えるやり方は、年齢層でRが違う場合などにもよく使われる手法だ。インフルエンザの数理モデルでは子どもの感染が鍵になるので、年齢別に考えることが多い。また性感染症の場合は、性別を分けて考えないとモデルが成り立たない。

「こういうふうに細かく区切っていくのを、コンパートメントを細かくすると言います。でも、いくら細かく区切った緻密なモデルを作っても、データがとれなければうまくいかないので、たぶん西浦さんたちはそのデータを手にしたんですね。職種別の接触数とかが、ビッグデータでとれたんじゃないかと思います」

 その結果、どういうことが分かるのか実に興味深い。しかし、断片的な情報からの推測はやはり精度が悪すぎるので、この程度で。ちょっと知的な好奇心を掻き立てられる部分もあって、聞いてみた次第だ。いずれ、日本の諸状況を勘案した大局的な将来予測を、根拠とともに見せてもらいたいと切に願っている。それが、英米の予測と大きくは変わらないものだとしても、やはり、議論のベースにしやすいものになるのは間違いないのだから。

 いずれにしても、ここで大事なのは、日本での対策上のシナリオにおいても、「次の波」を想定した上で事が進んでいるということだ。5月14日に専門家会議の記者会見で示されたイメージ図では、非常事態宣言の解除後も、「新しい生活様式」を取り入れて、なおかつ、効果的なクラスター対策を行いつつ、それでも、また次の波がやってくることが前提とされていた。「早期診断から重症化予防までの治療法の確立」「ワクチンの開発」によってCOVID-19を克服できるまでそれが続く。

 波と波の間のいわば「COVID-19時代の平時」の鍵となるのは、「新しい生活様式」やICT活用や保健所機能強化によって引き上げられた「効果的なクラスター対策」だということになっているわけだけれど、裏を返せばこれまでのクラスター対策では充分ではないということでもある。では、そこをどうすればいいのか、という点は、今、日本だけでなく世界中で課題になっており、それについては次回。

5月14日専門家会議が発表した緊急事態宣言解除後の日本のシナリオの概念図。
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つづく

2020.05.21

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中澤港(なかざわ みなと)

1964年、東京都生まれ。神戸大学大学院保健学研究科パブリックヘルス領域/国際保健学分野教授。神戸大学大学院国際協力研究科教授を兼務。博士(保健学)。専門分野は公衆衛生学、国際保健学、人類生態学、人口学。1988年、東京大学医学部保健学科を卒業後、同大学院医学系研究科保健学専攻に進み、1992年に博士課程を中退して同人類生態学助手に就任。在任中に論文博士を取得し、山口県立大学看護学部助教授、群馬大学大学院医学系研究科助教授などを経て、2012年より神戸大学大学院保健学研究科教授を務める。『人間の生態学』(朝倉書店)『わかる公衆衛生学・たのしい公衆衛生学』(弘文堂)などの共著では感染症の章を担当した。日誌的なメモ「鐵人三國誌」やツイッターアカウント@MinatoNakazawaでもCOVID-19を読み解くヒントを発信している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、肺炎を起こす謎の感染症に立ち向かうフィールド疫学者の活躍を描いた『エピデミック』(BOOK☆WALKER)、夏休みに少年たちが川を舞台に冒険を繰り広げる『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』『風に乗って、跳べ 太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からのスピンアウトである、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)で、第34回講談社科学出版賞と科学ジャーナリスト賞2018を受賞。ほかに「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)もある。近著は、「マイクロプラスチック汚染」「雲の科学」「サメの生態」などの研究室訪問を加筆修正した『科学の最前線を切りひらく!』(ちくまプリマー新書)
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。