「コロナ禍」はいつまで続く?:2022年終息説ほかいくつかのシナリオ

再生産数Rの分散の高さが考慮されていない

 それでは、こういうシナリオを日本に適用するとどうなるだろうか。

 ハーバード大学や、インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームの予測に比肩する能力を北海道大学の西浦博さんのグループも持っており、対策班の中では緻密な計算がなされているはずなのだが、それを論文として公表する余裕はなさそうだ。だから現時点では想像するしかなく、しかし現時点であまり不確実な想像を述べ立てるのはあまり健全なことではない。だから、感染症数理モデルを研究レベルで扱う「同業者」としての中澤さんから見て、最低限行われていることはどんなものか聞くに留める。

「インペリ・グループも、ハーバード・グループも、日本で重視していたRの分散の高さを考慮していないのが特徴です。単純に感染者の数や、ICU病棟の逼迫をトリガーにして、ロックダウン的な介入の開始と解除を繰り返すモデルを作っています。日本では、いったんクラスター対策の接触者追跡が機能しなくなったので、今、接触自体を減らすことになっていますが、また新規感染者を減らせばクラスター対策が有効になってくると対策班は考えているようですから、その効果を織り込んでいることは間違いないです」

 3月以降、予想外の大流行を起こした欧米からの帰国者の効果もあってクラスター対策が機能しないところまで追い込まれたものの、再び落ち着いたら丹念な接触者追跡と、クラスター発生の予防をセットで行っていくというのが今のところ語られているシナリオだ。それによってRを1以下にできるなら、二度目の緊急事態宣言を避けられるはずだ。

 さらに、なぜ8割減が必要なのかを補足した西浦さんのツイート(※4)などを見ていると、「接触を起こす属性別に再生産数を行列として計算し(次世代行列)、性的接触に介入できないことを想定、他のところで8割落ちたとして要素別に減少を加味、結果として固有値で与えられる再生産数の代表値が1を下回る、という理屈」に言及していて、相当、緻密なことをしている雰囲気だ。

 ぼくなりにこのツイートを解釈すると、この場合、「クラスター感染しやすい人」と「そうでない人」では、感染のリスクが違い、つまり再生産数Rも違うから、別々のRを考えて式を立てる。そして、それぞれのグループ内だけでなく、相互の感染もあるからそれらについても、別のRを考えて式を立てる。というようなことをしていくと、それらを同時に表すためには行列を使う必要が出てくる。高校数学で行列を学んでいなければ謎の数式になるが、それをもとにコンピュータにガリガリと計算してもらって、どこのグループの接触がどれだけ減れば、感染を抑え込めるかシミュレーションしている、というふうだろうか。

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(※4)https://twitter.com/nishiurah/status/1248440487041622016

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