「コロナ禍」はいつまで続く?:2022年終息説ほかいくつかのシナリオ

 ハーバード大学のリプシッチ教授のグループは、COVID-19の研究でも世界をリードするセンターの一つで、その後も様々な発信をしていくことになる。そして、もうひとつ世界的なセンターは、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンのファーガソン教授のグループだ。イギリス政府にとっての「専門家会議」の中枢を担い、こちらでも初期から力強く情報発信を続けている。専用の情報サイトに矢継ぎ早にレポートが発表されていくのは、実に心強いものだ。おまけに要旨については日本語を含む各国語訳まで準備されており、このグループの使命感、責任感の強さを感じさせられる。

「だから、やっぱり、希望としてはワクチンか治療薬なんですが、それが使えるまでには最短でも1年か2年はかかるだろうと思われるので、それまでなんとかもたせなきゃいけないって話なんですね。それをもたせるにはどうしたらいいかというのを、インペリのファーガソン教授のグループが、3月16日に報告した『レポート9』(※2) にひとつシナリオを載せています。それによると、対人接触を減らしたり、対人距離を開けるぐらいの緩和策だと、確実に感染爆発を起こす局面が出てきて、医療的対処水準を超えるオーバーシュートが起こってしまうんです。それを防ぐためにはどうしてもロックダウンに近いいくつかの行動抑制手段を組み合わせて、1~3 カ月の抑え込みを行えば、ある程度、新規感染者数を抑え込めて、でもそれをやめてしばらくたつとまた感染者数が増え始めるので、またロックダウンに近いことをやってというのを繰り返すと、医療崩壊を起こさずに1年か2年耐えられるというシミュレーション結果なんですよね」

 どうだろうか。ものすごく気が長い話で、ため息が出る。日本では欧米の「ロックダウン」よりもかなり穏やかな準ロックダウンとでも言うべき状況にあるけれど、それでもこれを何度もやれというのはかなりしんどい。

 なおファーガソン教授らのモデルで興味深いのは、学校閉鎖の効果の見積もりだ。

「インフルエンザのモデルをベースにしているので、ちょっと学校における子どもと子どもの感染を過大に見積もっている可能性があるんですが、それでも、学校閉鎖だけだと総感染者数は2パーセントしか減らないんです。学校に行かなくても、外に出て感染してきた大人が子どもに感染させうるし、子どもがコミュニティのなかで感染するリスクも上がるので、学校閉鎖だけだと効果が薄いということです。これは、3月に学校を全国で一斉休校にしたのを、僕が愚策だと評した理由の一つです。学校を閉鎖するなら大人も一緒にやる必要があります」

 何度もロックダウンを繰り返すシナリオについては、ハーバード大学のリプシッチ教授のグループもインペリ・グループに引き続いて発表した(サイエンス誌4月16日 、プレプリントサーバーには3月7日)(※3)。それによれば、ICU病床の逼迫具合をトリガーにして『社会的距離戦略(論文中では学校や職場を閉じ、集会を禁止するなどの準ロックダウン的状況を想定)』の開始と解除を繰り返し、2022年までかけて集団免疫を獲得できることになっている。

 本当に気が長い対処の日々が待っていそうな予感が、ひしひしとする。

社会的距離戦略を繰り返すシナリオ、米国の例
現状の医療体制ABと、救急用の病床数を倍にした場合CDを比較したハーバード大の研究。左の図中、1万人当たりの感染者数が黒線で、1万人当たりの重篤患者数が赤線(単位はそれぞれ左右の軸の通り)。実線は医療崩壊が起こる重篤患者数。学校や職場を封鎖し、集会のサイズを制限する社会的距離戦略を実施あるいは解除するタイミングを破線で示したレベルとすると、その実施期間は薄紫色の部分になる。右の緑色の線は各ケースにおける集団免疫割合。このグレーの線は集団免疫を達成する目安。なお、冬の基本再生産数R0を2.2、季節性がある場合、夏のR0を1.3(4割減)とし、社会的距離戦略は再生産数を6割下げるとした。現状の延長であるABについては、2022年でも累積有病割合は3割程度で、さらに社会的距離戦略が続くと予想。CDのケースでも、2022年上旬まで社会的距離戦略が続くと予想している。
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(※2)https://www.imperial.ac.uk/mrc-global-infectious-disease-analysis/covid-19/report-9-impact-of-npis-on-covid-19/
(※3)https://doi.org/10.1126/science.abb5793

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