新型コロナ、クラスター対策と「8割減」の本当の意味

日本のクラスター対策の本質

 もしもこれが正しければ、一時、まことしやかに語られていた「欧米のウイルスは変異して感染性が高いのではないか」「なおかつ強毒性なのではないか」という今のところ「後付け」感のある仮説を取らずにすむ。また、日本のクラスター対策が、3月の半ばくらいまで有効に機能していたように見える理由も自然に説明できる。

「僕は、クラスター対策班がやったことの意義、その本質が過小評価されていると思っています。批判する人からは、クラスター対策班は、どの国でもやっている感染者の接触者追跡をして潰すことだけをやっていればいいと誤解を与えたというような言われ方をしてますが、それだけがクラスター対策ではないんです。彼らがやったことの一番大きな意義は、やっぱり集団感染が起こりやすい条件、『3つの密条件』を見つけて、それが起こるのを防げば新たなクラスターができるのを防ぐことができると予防策を打ち出したことのはずなんです。なぜか押谷先生はあまりそこを強調していませんよね。それで誤解されている部分があるんじゃないですかね」

 たしかに、ぼくの理解でも、クラスター対策というのは、たくさんの人がまとめて感染した集団を見つけて、それを対策する、というイメージだ。そこから接触者を追いかけて抑えればよいというふうに響きがちだし、実際にそのために大きな労力を割いてきた。

 でも、ふと考えてみると首をかしげることもある。

 例えば、西浦さんたちの論文(※1)では、札幌の雪まつりの屋内施設など密閉された環境で集団感染が起きたという話があった。また、その後、日本各地で、集団感染が起きやすい施設や状況の具体例がいろいろ報告されるようにもなった。しかし、それらは「すでに起きてしまったクラスター感染」だ。地道にリンクをたどり連鎖を断つのが大事であることには異論はないけれど、起きてしまったことを事後に追いかけても自ずと限界があるのではないか。

「たしかに会見などでは連鎖を切るのが大事だということが強調されてきたので、そんなふうに思う人もいるわけです。でも、クラスター対策には、一人が8人、10人感染するような条件ができるところを見つけて予防する意味もあって、実際に起きた集団感染の連鎖を断つことと、そこから得られた知見をもとに、まだ起きていない集団感染を予防すること、というのが重要なことだと思うんですよね」

 連鎖を断つことと、予防することが、表裏のようになっている、というふうにぼくは理解した。

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(※1)https://doi.org/10.1101/2020.02.28.20029272

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