新型コロナの感染者はどのぐらいいるのか:検出率と抗体検査

 検査で把握できる感染者数は氷山の一角で、見えていないところにものすごい数の感染者がいる。それが、桁が違うほどかもしれないというのは十分ありうる。これは、日本のみならず、世界各国でそうだ。

 だから、確定診断がついた患者数で一喜一憂するのではなく、背後にある真の感染者数や、人口の中の有病割合(世間では「感染率」などとよく呼ばれる)を知りたいというモチベーションが生まれる。世界各国の公表データから、それを推測した論文があるので、紹介する。

「ゲッチンゲン大学のフォルマー教授が4月2日に発表した世界の感染者検出率です(※1)。仮定は単純で、まず、インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームが3月30日に発表した論文(※2)に掲載されている年齢別の感染致命割合(IFR)が世界中のどこでも正しいとして、各国の年齢別人口を国連のデータベースから得て、それで重み付けした各国別の感染致命割合(IFR)を計算します(日本は1.60%)。死者数をそれで割ると、各国の2週間前の感染者数が推定できて(日本は3月17日に3490人)、その時点で各国で実際に把握されていた確定患者数(日本は3月17日に878人)を推定感染者数で割ると、感染者捕捉率(検出率)が得られるわけです。ラフな推定値ですが、3月17日時点での日本の検出率は約25パーセントでした」

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 実際にいるはずの感染者の4分の1が検出できているとすると、これは思ったよりも高い検出率ではないだろうか。逆に言えば、見つかっている感染者の背後には、その3倍くらい、未発見の感染者がいるというふうにも理解できる(フォルマー教授は、論文発表後にも数字をアップデートしており3月30日時点での推定も出している(※1)が、傾向は変わっていない)。

 ちなみに、他の国では、徹底的な検査を行った韓国で49パーセントというのは納得できるけれど、やはり検査を徹底したはずのドイツは15.58パーセントと日本よりも低くなっている。医療崩壊に至ったとされる欧米の国々は、すべて5パーセント未満だ。これだけを見ていると「氷山の一角」の度合いが高いのは、日本よりもイタリア(3.5%)、フランス(2.62%)、スペイン(1.68%)、イギリス(1.19%)、アメリカ(1.59%)といった国々だ。

「検査AとBしかしていなかったにしては、よい検出率だったと言えると思います。初期の中国の検出率は10パーセントくらいだっただろうと西浦さんたちが計算していましたし、2月25日時点での北海道で、確定診断がついた人35人に対してシミュレーションで求めた感染者数推定値は940人だったので、こちらは検出率がわずか3パーセントでした。そういったものに比べても3月中の日本全体の検出率はよいんです。もっとも、フォルマー教授の研究とは方法論が違うので一概に比べられません。フォルマー教授の計算で一番大きな仮定は『死者数は正しく報告されている』ということなので、そこは人口動態統計でトータルの死者数を確認しないと確信がもてないところですね」

 ちょっと不安な言明だ。日本では死後の剖検率が低く、死因の確からしさに疑問が残ることがあるとよく聞く。では、COVID-19についても、日本の「死者数」は正しく報告されているのだろうか。警察が変死として扱った事案で、死後にPCR検査をしたところ、新型コロナウイルスへの感染が判明したケースが4月以降いくつか報告されているし、他にも感染が発覚しないまま亡くなった人がかなりいる可能性も切り捨てられない。もちろん、COVID-19による死亡が実は報告されているものの10倍以上だったということにならないかぎり(さすがにありそうにない)、3月における検出率は欧米よりも高いままなのだが、それでも気になる。

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(※1)Sebastian Vollmer, Average detection rate of SARS-CoV-2 infections, Georg-August-Universität Göttingen,
(※2) https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30243-7

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