新型コロナPCR検査の状況を読み解く「3種類の検査目的」

 最初に確認しておくと、検査を拡充すれば見つかっていない陽性者が見つかるわけだから、その数は間違いなく増える。現在、見つかっている感染者数は氷山の一角だ。そのことについては疑いの余地がない。

 これは日本のみならず、世界中のどの国でもそうだ。見つかっている感染者と実際の感染者との間には、しばしばケタのレベルでの違いがあるからこそ、以前に議論した致命割合も、「確定診断がついた患者の致命割合(CFR)」と「感染者全体の致命割合(IFR)」を区別する必要があった。

 だから、日本のこれまでの検査が少なすぎるのではないかという不安は、つまり、その程度の検査で、感染の推移がきちんと捉えられているのか(検査されていない人の中で、全体に影響するような感染爆発みたいなことが起きているのではないか)という不安であると読み替えることができるだろう。

 そのような疑問をぶつけたら、中澤さんは画面上にグラフを示して説明してくれた。感染者数のグラフを国を選んで生成できる自作のスクリプトを走らせ、欧州で感染者が多かったイタリア、スペイン、フランスに、日本を加えてプロットしたものだ。

国別の感染者増加の片対数グラフ(グレーの曲線は他の国々)。スクリプトは<a href="http://minato.sip21c.org/testgraph.R" target="_blank">http://minato.sip21c.org/testgraph.R</a>に。(中澤港氏提供の画像に一部の国名を追記)<br><a href="https://covid19datahub.io/" target="_blank">https://covid19datahub.io/</a><br>Guidotti, E., Ardia, D., (2020). COVID-19 Data Hub Working paper  <a href="https://doi.org/10.13140/RG.2.2.11649.81763" target="_blank">https://doi.org/10.13140/RG.2.2.11649.81763</a><br> R Core Team (2020). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. <a href="https://www.R-project.org/" target="_blank">https://www.R-project.org/</a>
国別の感染者増加の片対数グラフ(グレーの曲線は他の国々)。スクリプトはhttp://minato.sip21c.org/testgraph.Rに。(中澤港氏提供の画像に一部の国名を追記)
https://covid19datahub.io/
Guidotti, E., Ardia, D., (2020). COVID-19 Data Hub Working paper https://doi.org/10.13140/RG.2.2.11649.81763
R Core Team (2020). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. https://www.R-project.org/
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「これは縦軸が感染者の累計の対数になった片対数グラフで、直線的に伸びている場合は指数増加なんです。最近欧米の国も、一時に比べて傾きがゆるくなってきていますが、途中までは直線的に伸びていてこれは猛烈な指数増加でした。日本も最近までは直線的なので指数増加には違いなかったのですが、比較的ゆるやかです。この時に、もし検査数を絞ったことで見つかっていない感染者が多かったとしても、傾き自体が変わることはなかったはずです。逆に、たくさん検査をして、それに応じてたくさん感染者が見つかっていても、傾きが同じままでそのままグラフが上にずれるだけです」

 ちなみに、この片対数グラフの傾きは、再生産数Rに依存する。Rが大きければ傾きが大きく、小さければ傾きもゆるやかだ。このグラフからは欧米諸国に比べて日本のRが低く抑えられてきたことも見て取れる。

 もっとも、こういう説明を身近な友人にしてみたところ、「でも、検査が多くないと、検査されなかったところで、その傾きに影響を与えるような大きな感染爆発が起きていないか心配だ」という反応だった。

「それは、ありえないんじゃないかなあ」と中澤さん。

「検出されている人たちの増え方が一定なのに、検出されない人たちのみがそれとは違うもっと大きなRで増えているということなので、なかなか考えにくいです。もしもあったとしても、重症化する人が増えた時点で捕捉されるだろうし、長期にわたってはありそうにないですね」

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