超過死亡というのは、インフルエンザの流行がなければ死を回避できたであろう死亡者数、いわゆる「インフルエンザ関連死」まで含めてカウントしたものだ。インフルエンザが直接の死因ではなくとも、合併した細菌性の肺炎、持病の呼吸器疾患や心疾患の悪化などで亡くなる方が分かりやすい例だ。ただ、そういったものだけでなく、インフルエンザの流行で医療が行き届かなくなったことで引き起こされる死も「関連死」だ。だから、その数は、死亡統計が出揃った後、インフルエンザの流行がなければなかったであろう死亡数を、統計モデルを使って推定することで確定する。今回のCOVID-19についても、こういった関連死まで考慮した「拡大版の致命割合」を考えるなら、もっと大きな値になるはずだ。しかし、それはまだ推定もできないので、今、比較すべきは「関連死」を含めない直接の死亡の致命割合だ。

 なお、0.1パーセントという値は、日本語の世界だけでなく、英語のニュースや論文でもしばしば目にする。

「そっちの方は別の原因があって、WHOやアメリカのCDC(疾病対策センター)が『0.1パーセント未満』としているのを0.1パーセントだと誤解して書いていることが多いと思います。これは、なぜ『未満』かというと、世界には確定診断もちゃんとしてもらえないような地域があって、そういうところでは医療水準も低いから、そんなに重症じゃなくても死んでしまうことがある、と。そういうものまで考えた場合、最大でも0.1パーセントということです。あくまで『未満』なんです」

 世界の医療事情を考慮した数字であり、こちらもある意味、「拡大版の致命割合」がそのまま流通してしまっているとのことだ。

 以上、インフルエンザの致命割合を考えるだけでもトラップがたくさんという印象だ。実際に、COVID-19との比較の報道でも、0.1パーセントという「拡大版の致命割合」が間違って使われていることは今もよく見る。

感染者致命割合IFRとは?

 COVID-19の致命割合を議論するには、さらに注意しなければならないことが増える。今度は分母の側の問題だ。

「致命割合を計算する際の分母は『確定診断がついた患者数』ですけど、検査体制や医療体制に大いに依存します。COVID-19には無症状の人もいると考えられているのでなおさらです。そこで、確定診断された患者ではなく、感染者全員を分母にとった、『感染致命割合(IFR:Infection Fatality Ratio or Risk)』を推定した上で比較した方がよいのではないかという考えが出てきます」

 ここで「感染者全員」というのは、いかなる検査をもってしても見つけ出すことができないので(かりに全員を検査しても偽陰性の人がたくさん出るので全員は捕捉できない)、なんらかの方法で推定しなければならないことに留意しよう。しかし、その推定をうまくして「感染致命割合(IFR)」を求めることができれば、検査体制に依存しない、ユニバーサルな議論ができるようになる。

次ページ:致命割合の3つのパターン

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