新型コロナの厄介さと怖さを知る:2つの致命割合CFRとIFRとは

「まず、疫学でよく使われる病原性の指標である致命割合は、CFR(Case Fatality RatioまたはRisk)というものです。これは確定診断がついた患者のうち、その感染によって死に至る割合です。分母が確定診断がついた患者だというところがポイントです」

 確定診断された患者の数は実数が把握できるので、その中で亡くなった人を数えて致命割合を計算する。非常に分かりやすい考え方だ。

「これまでに分かっている感染症の致命割合(CFR)は、SARSが10パーセント、MERSが35パーセント、スペインかぜが3パーセント、アジアかぜが0.5パーセントと言われています。そして、これまでのところCOVID-19は、1パーセントから10パーセントというふうに幅があります。これは、国によって、検査体制や医療体制、さらには、感染者の年齢分布が違うためだと考えられます」

 致命割合は、その感染症の病原性を示すとても大事な指標だ。これが高いと、発症したとたんに死を覚悟しなければならなくなり、大きな恐怖を与えるものとなる。たとえば、エボラ出血熱は1976年に旧ザイール(現コンゴ民主共和国)の村で流行した際、致命割合が90パーセントを超えた。ここまで来ると、発症=ほぼ確実な死、ということになってしまう。一方で、コロナウイルスがかかわるSARSもMERSも、かなりの高い割合であり、直観的にも「怖い」病気だ。

 そして、スペインかぜの3パーセント、アジアかぜの0.5パーセント、COVID-19の1パーセントから10パーセントも、決して小さな値ではない。1918~1920年に世界的に流行したスペインかぜは、全世界で数千万人が死亡した。数パーセントという致命割合は、パンデミックになった場合、その規模の被害をもたらしかねないものだ。

単純ではないインフルエンザとの比較

 こういったことは、ぼくたちが日常的に体験している季節性のインフルエンザと比較するとよいかもしれない。

「それは大事なことで、ちょっと詳しく説明します。日本で、季節性のインフルエンザで確定診断がついた患者数(推定値)は年間1000万人ほどで、直接の死者は2000~3000人です。とすると、致命割合(CFR)は0.02~0.03パーセントですよね。でも、一般には一桁大きな0.1パーセントという数字をよく見ると思うんです。これは、分子をインフルエンザ関連死も考慮して推定した超過死亡1万人としたものです。だから、これと比較するのは間違いです。COVID-19の致命割合1パーセントから10パーセントと比較できる季節性インフルエンザの致命割合は0.02~0.03パーセントで、COVID-19の方が2桁以上大きいんです」

 分子にあたる死亡者の数が数え方によって変わってくるという話だ。ここはすごく基本的かつ大事なところなので、再確認しよう。

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