第5回 自閉スペクトラム症の早期支援が大切な理由

「まず、その子が楽しめる遊びを親子で一緒に遊ぶ時間を必ずとってもらいました。そして、その遊びを通して、その子がどんな遊び方をして楽しんでいるのかをしっかりと観察し、遊びに合わせてやりとりを広げるように練習していただきました。その結果、その子がどういう場面で安心でき、逆に何がその子を不安にさせ、しまいには感情を爆発するまでに追い込んでしまうのか、親がよく理解するようになったんです。爆発してからなだめるというこれまでのやり方から、あらかじめ見通しを持たせて、選択肢を示してあげられるようになって、お子さんも安心して世界とかかわれるようになりました。そうすると、家でかんしゃくを起こす頻度も減り、起こしても自分から気持ちを切り替えられるようになったということです」

 この子の場合、幼稚園に行けないことが大きな問題になっており、なぜ行きたくないのか本人は口を閉ざしていた。幼稚園に行っていたときには問題なく過ごしていると幼稚園の先生は言うのになぜ行き渋るのか。これもペアレントトレーニングを通じて得た、その子が楽しめる遊びの中でのやりとりから突破口が開けた。

「これまでは、なにも教えてくれなかったのに、お母さんがごっこ遊びをしながら上手に聞き出しました。お母さんがウサギの真似をして、『あたしは幼稚園嫌いなんだけど』って言ったら、『ぼくもだよ』って答えたそうです。そこで『どうしたらいい?』って、ウサギに聞かせると『壁になればいいんだよ』って言うんですよ。びっくりしました。4歳でそんな事を考えているなんて!」 

 ぼくはこのエピソードを聞いた時、まずはクリエイティヴさに胸を打たれ、しんしんと愛しい気持ちがこみ上げてきた。と同時に、やはり胸を締め付けられるような感覚を抱かざるをえなかった。

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「幼稚園に行ったら壁になるなんてすごく悲しいから、この子が園でも楽しめるように、わたし、園長先生にお手紙を書いたんですよ。でも『私は発達障害をよく知っているけれど、この子は違います』って園長先生に言われちゃったって。自治体の支援センターの方も園に説明に行ってくださったんですが、何かものすごい自信のある園長先生で、聞いてくださらなくて、がーんとなりました。お母さんももう園を替わろうかと考えていたところ、多分、気にしてくださったのか、あるときに園長先生がその子と一緒に遊んで、『どうして、あれしないの』って聞いたら、『ぼくね、元気ないの。これをしてるときは元気だけど、あれをするときは元気がないの』と言ったのが、何かすごい心に刺さったみたいで、ちょっと対応を変えてくれて、今では連続して通えているそうです。それも行くのが楽しみ! というそうですよ」