第1回 「自閉症」ってなんだろう

 では、自閉症、自閉スペクトラム症とは、どんな状態を指すのか。

「──自閉スペクトラム症というのは、行動をベースにしてつくられた症候群です。まずは、対人関係やコミュニケーションに顕著な特徴があって、専門家が見れば1歳くらいからかなり分かるし、2歳になるとほぼ確実に分かります。具体的には、『共同注意』といって、定型発達のお子さんなら、1歳半になれば、おかあさんがモノの名前を言わずにただ指を差せばそのモノを見ますよね。また、いつもと違うことや少し怖いことがあった時に、おかあさんの顔を見てその反応を確かめたりします。これは『対人理解』の領域ですね。こういったことが、自閉スペクトラム症のお子さんは遅れるんです」

「──あと、もう一つ重要な特徴は『こだわり』です。これは、専門的には『興味の限局と反復常同性』と言います。まず『興味の限局』というのは、例えば、ポケモンばっかりが好きとか、電車ばっかり好きとか、興味が偏っていてそこから逸れないということです。一つのことに何か注意がいったらなかなか他に注意を移せないし、一つのことを信じたらそれを訂正するのは大変です。ネガティブにいえば柔軟性が乏しく、ポジティブにいえば一つのことを徹底してやり抜くという両面があります。で、『反復常同性』というのは、知的障害のあるお子さんだったら、手をひらひらしたりするんですよ。これは目的がよくまだ分からないんですが、やっぱり正確に同じパターンを繰り返して、その刺激のパターンは一定であるっていうことにこだわっているっていう」

 なにはともあれ、対人関係やコミュニケーションに特徴があり、こだわりが強くそれが生活上の困難につながる、というのが自閉スペクトラム症の特徴だという。

 とはいわれても、やはりまだピンとこない。もうすこし具体的なところに落とし込んで理解したいところだ。

つづく

神尾陽子(かみお ようこ)

1958年、大阪府生まれ。発達障害クリニック附属発達研究所所長。児童精神科医。医学博士。1983年に京都大学医学部を卒業後、ロンドン大学付属精神医学研究所児童青年精神医学課程を修了。帰国後、京都大学精神神経科の助手、米国コネティカット大学フルブライト客員研究員、九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年から2018年3月まで国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長を務める。現在は発達障害の臨床研究や教育・医・福祉の多領域連携システムの構築に携わる傍ら、診療活動や学校医および福祉施設の嘱託医を務めている。一般向けに『ウタ・フリスの自閉症入門』(中央法規出版)、『自閉症:ありのままに生きる』(星和書店)などの訳書がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、肺炎を起こす謎の感染症に立ち向かうフィールド疫学者の活躍を描いた『エピデミック』(BOOK☆WALKER)、『青い海の宇宙港 春夏篇』『青い海の宇宙港 秋冬篇』(ハヤカワ文庫JA)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からのスピンアウトである、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた近著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)で、第34回講談社科学出版賞と科学ジャーナリスト賞2018を受賞。ほかに「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)もある。近著は、ブラインドサッカーを舞台にした「もう一つの銀河のワールドカップ」である『風に乗って、跳べ 太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。