あなたの知らないカナダワイン
カナダのワインといわれても、たいていの人は飲んだことすらないと思う。仮に何か思い浮かぶとしても、せいぜいアイスワインぐらいのものだろう。代表的なカナダのお土産で、細めのボトルに入ったちょっとお高めなワイン、それがアイスワインだ。
アイスといっても別に凍ったワインではない。凍らせたブドウから作ったワインをアイスワインという。ブドウは秋に実る。当然、ワイン作りも秋の収穫から始まるのだが、アイスワインの場合は秋に収穫せず、ブドウの房を蔓(つる)にぶら下げたまま冬を迎える。すると、厳しい寒さによってブドウの実の中の水分が凍ったり溶けたりを繰り返す。やがて糖分が凝縮された、少量の非常に甘い果汁が生み出されるのだ。
ひと粒から得られる果汁はたったの一滴。ひと房でもスプーン1杯ほどにしかならない。しかも蔓にぶら下がった房は、風に吹かれたり雹(ひょう)が降ったりして収穫前におよそ半分が落下してしまう。さらに、氷点下8度の気温が24時間続いた時に収穫しなければアイスワインを名乗れないという基準があるため、冬まで房が落ちずにいても条件がそろわず、アイスワインを作れない年すらある。
ごくわずかな甘い甘い果汁から、手間ひまをかけてアイスワインは作られる。だから値段が高めなのも当たり前だといわざるを得ない。
ただし、アイスワインはカナダのワイン生産量のわずか5%を占めるにすぎない。いくらアイスワインが素晴らしいといっても、それだけでカナダワイン全体を語るわけにはいかないのだ。