あなたの知らない小麦畑

エドモントンの小麦農家、レイさんと奥様
エドモントンの小麦農家、レイさんと奥様
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 プレーリー3州の1つ、アルバータ州の州都エドモントンで、僕はレイさんという小麦農家を取材させてもらったことがある。4代続くウクライナ系移民の一家で、今はレイさんの息子を中心に農業を営んでいる。

 レイさんの祖父母がカナダにやって来たのは1898年のこと。ただしウクライナからではなく、オーストリアからだった。入国時の書類を見せてもらうと、確かにそこにはオーストリアの文字があった。その次に書かれていたのは「Galicia」という地名。

 Galicia=ガリツィアとはウクライナの西部にあって、常に他国との紛争に巻き込まれてきた地方だ。レイさんの祖父母が移民としてカナダに来たとき、故郷は祖国ウクライナではなく、「オーストリア=ハンガリー帝国」に支配されていた。他国の支配下にあったガリツィアのウクライナ人。カナダを目指して大西洋を渡る決意をした背景には、故郷での「生きにくさ」があったに違いない。

 レイさんの祖父母のようにプレーリーにやって来た移民には、カナダ政府から東京ドーム約14個分の土地が無償で提供された。ただし「無償」には条件があった。3年のうち6カ月間はその土地で暮らし、やはり3年のうちに決められた面積の開墾を終えて家を建てるというものだった。

 その意味するところは、ちゃんと定住してしっかり開墾しろ、ということだろう。そして、ウクライナの人たちは、見事にそれをやってのけた。だからプレーリーには見渡す限りの小麦畑が広がっているのだ。

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