あなたの知らないトーテムポール
北米大陸の先住民が生み出したトーテムポール。その製作には、材料となる巨木が不可欠だ。世界有数といわれるカナダの温帯雨林の巨木がなければ、トーテムポールが生み出されることはなかっただろう。
カナダの太平洋沿岸、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)に巨木の森を育んでいるのが、日本列島の南を流れ行く黒潮だ。この暖流は、北太平洋海流などと名前を変えながら太平洋を東へ進み、BC州の沿岸あたりに到達する。
この海流のおかげで、BC州は緯度の割には暖かい。加えて、暖流が運んでくる水蒸気をたっぷり含んだ空気が内陸に向かう途中でカナディアンロッキーにぶつかり、手前のBC州に大量の雨を降らせる。この暖かさと雨によって、BC州には豊かな温帯雨林の森が広がり、巨木が育つ。なかでも柔らかくて加工しやすいレッドシダーの巨木が、トーテムポールの材料となる。
しかし、巨木があるだけではトーテムポールを作ることはできない。重要なのは、それを削るための道具だ。研究者の間では広く語られていることだが、実はカナダ太平洋岸の先住民は、ヨーロッパ人との接触によって鉄を入手する以前から、海岸に漂着した日本などの難破船に使われていた鉄をはがし、ナイフを作っていたと見られているのだ。