あなたの知らないカナディアンカヌー

巨大化したカヌーの骨組みの展示
[画像のクリックで拡大表示]

 ヨーロッパ人は、先住民が生み出したバーチ・バーク・カヌーを広大な大陸の移動・輸送手段として活用することにした。先住民がしてきたのと同じように、水陸両用の船としてこのカヌーを使ったのはいうまでもない。ただしヨーロッパ人は、先住民がしていなかった「あること」をし始めた。それが、バーチ・バーク・カヌーの巨大化だった。

 カナダ東部のオンタリオ州には、全長約100キロにも及ぶフレンチリバーという水路がある。フランス人がカヌーのルートとして開拓したことから、フレンチの名がついた。このフレンチリバー州立公園のビジターセンターには、巨大なカヌーの骨組みが展示されている。

 それは現代の大型トラックにも匹敵する大きさだ。2~3人乗りだった先住民のカヌーは、ヨーロッパ人によって漕ぎ手だけで10人を必要とし、数トンの荷物を運べるまでに大きくなった。ヨーロッパ人はよりたくさんの積み荷を運べるよう、先住民のカヌーを徐々に巨大化させていき、最後は大型トラックのようにしてしまったのだ。

 巨大なカヌーの登場は、カヌーを漕ぐこと、カヌーを担いで陸地を移動することを、過酷な労働へと変えた。やがて時代は進み、列車や自動車や飛行機が登場したことで、ようやくカヌーは巨大化の歩みを止める。

 そして今またカヌーは本来のサイズに戻り、カナダ人だけでなく世界中の人が楽しむアクティビティーとなっている。“普通サイズ”だからこそ、カヌーをかついで歩くポーテージだって楽しいのだ。カヌーの旅に、過酷さは似合わない。のんびり漕いで、のんびり担ぐ。カヌーの旅はいつも、幸せな移動であるべきなのだ。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 平間俊行(ひらまとしゆき)

ジャーナリスト。1964年、宮城県仙台市生まれ。報道機関での勤務のかたわら、2013年から本格的なカナダ取材を開始。歴史を踏まえたカナダの新しい魅力を伝えるべく、Webサイトや雑誌などにカナダの原稿の寄稿を続ける。2014年7月『赤毛のアンと世界一美しい島』(マガジンハウス)、2017年6月『おいしいカナダ 幸せキュイジーヌ旅』(天夢人)を出版。

おすすめ関連書籍

カナダの謎

なぜ『赤毛のアン』はロブスターを食べないのか?

知らなかったカナダの魅力を、深く、わかりやすく楽しむ。この本を読むと、絶対にカナダに行きたくなる! 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:本体1,200円+税