あなたの知らないカナダ先住民

カリブーの血を飲むと生命力が得られると先住民たちは考えていた
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 カナダでは、先住民からヨーロッパ人にサトウカエデの樹液の甘さが伝えられた。そんな「持ちつ持たれつ」の関係の象徴のような飲み物がある。

 毎年2月、ケベックで開かれるウィンターカーニバルで、店頭にずらりと並べられる「カリブー」というお酒がそれだ。カリブーとは大型の鹿のような動物。トナカイと考えればいいが、気になるのはその名前の由来だ。

 ヨーロッパ人にとっての先住民は、極寒の地で生き抜くための知恵を授けてくれるありがたい存在だった。だから一部のヨーロッパ人は、自ら先住民の集落へと足を運んだ。そんな人たちに出された「飲み物」がなんと、カリブーの血だった。

 先住民は、血を飲むことでカリブーの生命力を手にできると考えていた。だから、両者の友好の証(あかし)として、ヨーロッパ人に血を飲み干すよう勧めたのだ。「固(かため)の杯」といったところだろうか。

 ただし、ヨーロッパ人には飲めたものではなかっただろう。そこで彼らは、カリブーの血にこっそり酒を混ぜることを思いついた。これなら何とか飲めるし、先住民のご機嫌を損ねることもない。これこそが「カリブー」という名前の由来だ。

 もちろん、今の「カリブー」に血は入っていない。赤くするために、赤ワインと別のお酒を混ぜたりして作る。こんな関係のなかで、先住民のさまざまな知恵がヨーロッパ人に伝えられた。例えば冬のアクティビティであるスノーシューは、先住民が雪上の移動手段として木や動物の皮で作っていたもの。先住民の知恵は今もカナダで生き続けている。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 平間俊行(ひらまとしゆき)

ジャーナリスト。1964年、宮城県仙台市生まれ。報道機関での勤務のかたわら、2013年から本格的なカナダ取材を開始。歴史を踏まえたカナダの新しい魅力を伝えるべく、Webサイトや雑誌などにカナダの原稿の寄稿を続ける。2014年7月『赤毛のアンと世界一美しい島』(マガジンハウス)、2017年6月『おいしいカナダ 幸せキュイジーヌ旅』(天夢人)を出版。

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