あなたの知らないカナダ先住民

先住民が樹液からハードシュガーをつくる様子を再現
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 メープルシロップを楽しめるのは先住民のおかげ、と書いたばかりだが、実はこの表現は若干、正確性を欠く。そもそも彼らが作っていたのは液体のシロップではなく、石のように固いかたまりだった。インディアン・ハードシュガーと呼ばれている。

 サトウカエデの幹からわずかな甘味を持った樹液を採取すると、先住民はそれをくり抜いた丸太に満たし、焼いた石を何度も投げ入れて水分を飛ばしていった。延々とこの作業を繰り返すことで、彼らは甘くて固いハードシュガーを手に入れたのだ

 熱い石を運ぶのに使うのは鹿などの角。投げ入れる前には針葉樹の葉で灰を払った。そんな気の遠くなるような作業を繰り返して得られる砂糖のかたまりは、甘味だけでなく、栄養面からも貴重品だったろう。

 だから、この作業を厭(いと)う怠惰な部族が、他の部族の集落に忍び込んでハードシュガーを盗み出そうとし、戦(いくさ)に発展したこともあるそうだ。「甘さ」は命をかけて守るべきものだったのだ。

 のちに、先住民から甘い樹液の存在を教えてもらったヨーロッパ人も、やはり石のように固い砂糖のかたまりを作り始めた。なぜシロップを作らなかったのかって? それは、シロップを保存できる適当な容器がなかったからだ。

 ブリキ缶などの登場によって、ヨーロッパ人は先住民に教えてもらった固い砂糖をメープルシロップへと変化させていく。このカナダを代表する味は、まるで先住民とヨーロッパ人の共同作業によって生まれたように思えるのだ。

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