あなたの知らないカナダ先住民
カナダと聞いて多くの人が思い浮かべるものに、メープルシロップがあるだろう。では、この甘いシロップが楽しめるのは、大昔からここで暮らしてきた先住民のおかげだということはご存じだろうか。
メープルシロップは、カナダ東部のケベック州やオンタリオ州に自生するサトウカエデの樹液を煮詰めて作られる。生の樹液は、糖度2~3%のわずかな甘味を持つ。その存在に最初に気づいたのは、先住民だった。
とは言っても、実際にどうやってその甘さを知ったのかは定かではない。例えばこんな話がまことしやかに語られている。
狩りで獲物が捕れなかった先住民の男が、腹立ちまぎれに木に斧を投げつける。その晩、斧が突き刺さったあたりから樹液がポタリ、ポタリ。たまたま真下に鍋が置いてあって、そのまま食事を作ったところ甘くてびっくり、というのだが、ちょっとあり得ない話だろう。
当時、先住民の斧は石でできていた。簡単に幹に突き刺さるとは思えないし、仮に真下に鍋があったとしても、その鍋は鉄製ではなく、丸太をくり抜いた容器や白樺の樹皮で作った箱のような入れ物だった。そのまま火にかけてグツグツ、とはいかないのだ。
あり得る話と考えられているのが、折れた枝から垂れていた氷柱(つらら)を舐めたところ、かすかに甘味を感じたという説だ。まあ、真実は誰にもわからないが、我々が今、メープルシロップを楽しめるのは先住民のおかげであることに間違いはない。メープルシロップをパンケーキにかけるときには、ちょっとだけ彼らの知恵に感謝しておきたい。