「まず最初に挙げられるのは、火星ですね。火星には海岸線が見つかっているように過去に海があったというふうに言われていますし、今でも液体の水が季節ごとに染み出している場所も見つかっています。だから、現在でも地下に生命がひょっとしたら眠っているかもしれないと言われます。それと、火星のほうが地球よりも先に冷えて海ができたと言われているので、火星の海で先に誕生した生命が地球に飛来したという可能性もあります。火星に大きな隕石などが落ちて、宇宙まで舞い上がったものが地球に隕石として降ってきたと。地球に降ってくる再突入の際に表面は溶けますが中の温度はそれほど上がらないので、もし中に閉じ込められた生命がいた場合、高温にさらされることなく地球に到達する可能性があることが大気圏への再突入実験から言われています」

 火星の探査は続々と計画されている。これまでは生命そのものというよりも、水の存在などを探していたのだが、ここから先、生命と直接関連性のある有機物、あるいは生命の痕跡を残す鉱物の探査などが始まる。本連載でも登場いただいたNASAのジェット推進研究所(JPL)の小野雅裕さんがかかわっているマーズ2020もそのひとつだ。

マーズ2020のローバー。(イラスト: NASA/JPL-Caltech)
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 そして、宇宙生物学の文脈では、火星に生命がいる(いた)としたら、ひょっとするとそれが地球生命の祖先だったというSFめいた説も浮上する可能性があるのだという。実に壮大な話につながっている(地球と同じタイプの生命がいてびっくり! と思ったら、すでに送り込まれている火星着陸機にくっついて届いたものが広がっていたというふうなシナリオもありえて、それは惑星検疫という別のかなり現実的なテーマにもつながる)。

 さらに、火星以外にも有力な場所がある。

「衛星の表面が氷で覆われている、Icy Moon、氷衛星と呼ばれているものがあります。近い順にいうと木星の衛星エウロパが今、探査の候補になっています。表面は凍っていて、内側に海があるに違いないといわれているものですね。NASAではエウロパクリッパーというミッションにお金が付いて、2020年前半に探査機が飛ぶと決まってます。NASAはさすがといいますか、海の専門家をちゃんとチームに引き入れて、地球外の海の研究をしつつ、そこでの酸化還元反応を含めて生命が使えそうな化学エネルギーがあるかというモデリングの計算もやりつつ、実際に生命徴候をどう探すか本気で考えています。日本でも負けじと近年、宇宙に広がる水惑星の形成や進化を生命までつなげる『水惑星学』が立ち上がったりと活発な研究活動が展開されつつあります」

木星の衛星エウロパの凍った表面から、水蒸気が噴出している様子。(イラスト:NASA/ESA/K. Retherford/SWRI)
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