東工大地球生命研究所の藤島皓介さんは、とても大づかみに言って「生命が創発される条件を再現して確認する」研究を行っている。もう少し詳しく言えば、遺伝情報が転写され、翻訳されてタンパク質に至るまでの過程、いわゆる「セントラルドグマ」がどのようにして成立したのか、実験室の中で復元することで、その謎に迫ろうとしている。

生命の起源を研究している宇宙生物学者の藤島皓介さん。
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 そういった実験について詳しく教えてもらう前に、「そもそもの話」をしておこう。

 とても大事なことなので、立ち止まって問いたい。

「生命って、何ですか?」と。

 それが分からないと、すべての議論が漠然としたままになってしまう。

「クマムシの話をしましょうか」と藤島さんは、前にちょっと出たクマムシの話に立ち戻った。

「クマムシって面白くて、乾燥したりして乾眠状態、いわゆる樽(tun、タン)状態になる時、生と死のはざまの位置に自分を置いているわけです。ぼくも時折スライドなんかで出して、今このタン状態になっているクマムシは生きていますか、死んでいますかって問いかけます。代謝もすべて止まっていて、死んでいると言っていいわけですけど、水をかけると生きた状態に戻ります。生命の本質とはなにかと語ろうにも難しいのに、なぜか生きている状態と死んでいる状態というのは、何となく見分けられると。たぶん実はここにヒントがあって、生きているということと、生命であるということはたぶん別物です。生きているというのは状態で、その状態を維持するためのシステムが生命です。タン状態に入ったクマムシは、生命のシステムは持っているけれども停止している状態だと、僕はとらえてますね。水をかけるとそのシステムがまた動き出すわけです」

樽状態になってから復活するクマムシ。(撮影:堀川大樹)

「生命とは」という問いかけだから、自然と議論は哲学的な領域にも踏み込む。生命の生命たるゆえんは、「生きている」という状態そのものだけでなく、それを維持するシステムにあるという見解には、はっとさせられた。

 では、その上で、どういう条件が揃ったら、そういったシステムを持った生命と言っていいのだろうか。

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