鉄・硫黄クラスターを持つ「鉄硫黄タンパク質」というのは、エネルギー代謝に必須で、ちょっと調べてみると、光合成だったり、窒素固定だったり、細胞の中にあるミトコンドリアでのエネルギー代謝で電子伝達を担っているものもそうだと分かった。つまり、今の地球生命が、必要な炭素や窒素を確保したり、エネルギーを得るために普遍的に使っている仕組みなので、「生命の起源」を問うためには欠かせない。

 なお、一般にはあまり意識されていないけれど、地球生命を形作るタンパク質の約半分が、その中に金属を抱えているそうだ。一番有名なのは、赤血球の中にあるタンパク質、ヘモグロビンに鉄が組み込まれていることだろうか。これも、「酸素と結合として運ぶ役割」なのだから、まさに酸化還元反応に関与していることに指摘されて気づいた。

地球生命のタンパク質のなんと約半分は中に金属を抱えているという。
地球生命のタンパク質のなんと約半分は中に金属を抱えているという。
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 では、鉄・硫黄クラスターは、どんなふうにタンパク質に取り込まれたのか。

 鍵となるのは、原始地球にあった陸上の温泉や海底の熱水噴出孔だ。

「原始地球で『紐』ができた後、なにかの機能を持ったものが残ってこなければ生命にはつながらないという話を前にしましたけど、そこから考えましょう。アミノ酸がつながってペプチドになっても、それだけではほとんどガラクタです。では、どうやって、特定の機能を持ったものが濃縮されて、選ばれるのか。注目しているのが、その頃の環境中にあった鉱物の表面なんです。たとえば、地上の温泉にも海底の熱水噴出孔にも豊富にある硫化鉱物です」

 陸上の温泉や海底の熱水噴出孔は、常に外からエネルギーを供給されている場なので、原始的な代謝を行う要件を満たしやすい。利用な可能な化学エネルギーが次々に供給されており、それゆえ、生命の誕生の場の有力な候補と考えられている。一方、硫化鉱物というのは、書いて字のごとく硫黄と結合した金属のことだ。温泉に行くと硫黄の臭いがすることから分かるように、地球の内部から熱水が出てくるような場所には硫黄がたくさんあり、硫化鉱物を作っている。

「鉱物表面でアミノ酸がつながって紐になってペプチドができうるというのは分かっています。そこで、硫化鉱物の表面に、さまざまなペプチドがアットランダムに触れたとして、そのうちの幾つかが特異的にくっつくのではないかと考えて、実験をしました。アミノ酸の配列がランダムな様々なペプチドを用意して、硫化鉱物の表面にくっつけて、くっつかないものは全部洗い流した上で、残ったものがどんなペプチドなのか、鉱物とペプチドのペアを全部浮き彫りにするんです。それも、ただどんなアミノ酸があるかだけでなく、その配列まできちんと調べます」

「鉄・硫黄タンパク質」研究の実験設備。この中で硫化鉱物にペプチドを吸着させる。
「鉄・硫黄タンパク質」研究の実験設備。この中で硫化鉱物にペプチドを吸着させる。
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