「システインを取り除いた人工タンパク質でも、システインを作る機能が保たれることがわかりました。この研究は思いの外時間がかかってしまって、構想から4年の年月をかけてようやく昨年論文になりました。慶應の先生やスタンフォード大学の合成生物学のドリュー・エンディー教授にも加わっていただいて、生命の起源研究としても合成生物学としても画期的な成果になったと思います」

 そのようなスリリングな実験を行いつつ、藤島さんは、エイムズ研究センターでの同僚と研鑽し、さらには東工大のELSIに籍を移して新たな同僚たちと議論をするなかで、考えを深めていった。そして、セントラルドグマの中で活躍する核酸(DNAやRNA)と、タンパク質といった物質についてこんな洞察を得た。

「実はですね、核酸もタンパク質も、紐、なんです」

 藤島さんは、やや厳かな雰囲気で言った。生命活動の中で、とても大切な役割を担う核酸もタンパク質も、「紐」であると。

「DNAやRNAは、核酸がつながった紐ですし、一方で、タンパク質はアミノ酸がつながってできた紐です。こういった、ちょっと素材は違った2種類の高分子、紐を、生命はそれぞれ記憶媒体、化学反応を行う触媒としてうまく使っているんです。それなら、これらの高分子がどこから来たかが分かれば、今の生命がどう誕生して発展してきたかという大テーマの答えに近づけるんじゃないかなと思うようになりました」

DNAやRNAは核酸の紐、タンパク質(Protein)はアミノ酸の紐だ。(画像提供:藤島皓介)
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 生命はその活動の中で、遺伝子を格納するためには核酸という紐を使い、エネルギーを獲得して利用するためにはタンパク質という紐を使っている。これらの高分子がどのようにできて、どのように協調して働くようになったのか。大いに謎だ。そもそもセントラルドグマは2つの紐が協調しないとどうにも回らないから、やはり「卵が先か、鶏が先か」という議論にも発展しがちだろう。

 とにかくここで、藤島さんは、核酸とタンパク質(あるいはもっと短いタンパク質であるペプチド)の共進化という視点を得た。そこからはどんな景色が見えるのか素描してもらう。

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