そうすると、本連載の中ですでにお話をうかがっている田村元秀さん(すばる望遠鏡による観測で太陽系外の惑星を見つける)や、堀川大樹さん(クマムシ(極限環境に耐える生物)研究者としてエイムズ研究センターでの研究歴あり)だけでなく、NASAのジェット推進研究所(JPL)で火星探査のローバーを開発している小野雅裕さんや、日本の小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」にたずさわってきた岡田達明さんといった太陽系探査にかかわる人たちも、実はこの宇宙生物学の研究トレンドの上に乗っていたのがよく分かる。マーズ2020は、火星に存在したかもしれない(するかもしれない)生命の徴候を探るのが一大目標だし、はやぶさ2は、地球生命を形作るために必要なアミノ酸などの原材料物質の由来を解き明かすことが目的の一つに据えられている。

 藤島さんが関心をいだいてきた「古細菌(アーキア)と生命の起源」「地球生命が共通して持つ仕組みであるセントラルドグマの起源」というのもまさに宇宙生物学が解明すべき課題のひとつだというのは明らかだ。

地球の生命を問うには宇宙を考えなければならず、宇宙の生命を問うにはまずは地球の生命を理解するところから始めなければならない。
[画像をタップでギャラリー表示]

「僕を受け入れてくれたのはリン・ロスチャイルド博士で、極限環境微生物の研究を行う宇宙生物学者なのですが、これからは合成生物学が鍵になるから、あなたが古細菌の研究でやってきたようなことを、生命の起源と結びつけてさらに発展させたらおもしろいことになる。ぜひ一緒にやりましょうという風に言ってくださったんです。それで向こうにいる間に、そういう合成生物学と宇宙生物学のクロスオーバー研究の方向性を深めていきました」

 合成生物学というのは、「生命を合成する」というふうにも読める、とても衝撃的な研究分野だ。そして、実際に原始的な生命を作ってしまうという系統の研究もされている。とにかく、現在の分子生物学が持っている手法を駆使して、「作ってみて調べる」のが合成生物学の方法の基本だ。

 藤島さんがロスチャイルド研究室で試みたことというのは──

「地球生命に共通しているタンパク質を構成しているアミノ酸の種類は20種類あるけれど、その20種類すべてを最初は使ってなかったんじゃないかなという話をしたんですね。そしたらリンさんが、じゃあアミノ酸の種類を減らしたタンパク質を実際に合成生物学的に作ってみて、その機能を調べたら、初期のタンパク質の機能が予測できるんじゃないのかと。ああ、これだと思って。僕はこれまで古細菌の中にある祖先的と思われる分子の進化研究をやってきたけれど、その進化を巻き戻していって、共通祖先もさらに超えて初期にあり得た分子をデザインして合成して、その機能を調べていけばいい、と」

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る