第2回 生命は「2つの紐」から始まった?

 この時、藤島さんが強く印象付けられたのは、研究室の主催者が持っているテーマをトップダウンで割り振るような雰囲気ではなく、むしろ「あなたが持っているスキルは何ですかと、あなたがやりたいことは何ですかと真摯に聞いてくれる環境」だったという。もちろん、これは研究分野、研究室のカラーにもよるのだろうが、たしかに印象的なエピソードだ。

 そして、藤島さんはその時にどんな「原始のタンパク質」を実際に作ってみたのか。それが実に「宇宙生物学」的で、この分野の醍醐味を体現している。藤島さんの最初のターゲットは、「アミノ酸を作るタンパク質」だった。

NASAのエイムズ研究センター。米国カリフォルニア州のシリコンバレーにある。(写真:NASA)
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「現在のアミノ酸合成に関わる酵素は、20種類すべてのアミノ酸を使って成り立っています。でも、初期の生命が仮に今よりも少ない種類のアミノ酸しか使っていなかったとすると、その限られた種類の組み合わせで作った酵素で、新しいアミノ酸を合成しなければならなかったはずです。これも『鶏と卵の問題』を抱えていますよね。なので、この問題の一端を解決してみようと、 生命にとって非常に重要なシステインというアミノ酸を合成するのに必須な2種類の酵素から、全てシステインを取り除いた人工タンパク質を合成してみたんです」

 システインというのは、生命活動にとって本質的な役割を担っているアミノ酸だ(その役割については、次回、触れる)。それなのに、自然には非常にできにくい、あるいはできてもすぐ反応してしまうため、生命は自分で作らないと使えない。初期の生命は、当時、利用できたアミノ酸で合成酵素を作り、システインを合成したはずだ。ところが、現在のシステイン合成酵素には、それ自体にシステインが使われている。これは困った。「システインが先か、システイン合成酵素が先か」という問題につながる。だから、藤島さんは、現在のシステイン合成酵素からシステインを抜いたものを作ってみるという発想に至った。

 その結果──