第1回 そもそも「宇宙生物学」って何ですか?

 宇宙でなく、地球における生命の起源、分布、未来、と言っただけでも、今、ぼくたちの周りにあるおびたただしい生命の現在、過去、未来、すべての話なわけで、気が遠くなるほど壮大だ。なのに、それが宇宙規模になったらどうなってしまうのだろう。

 いや、地球生命の「起源」を考える時でさえ、そもそもその材料になったアミノ酸などが、隕石と一緒に宇宙から来たという話がある。また、我々の身体を作っている化学物質は、宇宙開闢(かいびゃく)後の物質進化の中で生み出されたものだ。

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 一方、地球生命の「未来」というと、今世紀中、いや十年二十年の間に、人類が月や火星に定住し始める可能性が現実味を帯びてきた。地球生命が宇宙に出ていくこと自体はもう間違いないように思える。

 結局、生命について起源や未来を考えようとすると、それだけでも地球内では話が完結できず、枠組みが宇宙規模になってしまうのは当たり前のことなのだ。

 さらにいえば、「分布」だってそうだ。

「我々が、現時点で知っている生命というのは地球の生命、ただ1種類なんですよね。では、この宇宙において、生命がその1種類だけかという問題が常にあります。地球の生命の起源を知る研究は、すなわち宇宙において似たような、あるいは全く違うメカニズムで生命が誕生するかということに迫る研究でもあるんです。地球の生命の普遍性、特殊性を考えた場合、地球のような惑星がどれぐらいの頻度でこの宇宙に存在しているか、天文学系の研究と考え合わせれば、宇宙のどういったところに生命が分布しうるのかという話にもつながっていきます」

 地球の生命を問うには宇宙を考えなければならず、宇宙の生命を問うにはまずは地球の生命を理解するところから始めなければならない。宇宙生物学では、解き明かしたい目標とそのステップとなる個々の探求が、「卵が先か、鶏が先か」というレベルで入れ替わりながら密接にかかわっている。

 そんな中、藤島さん自身の研究者としてのバックグラウンドは、合成生物学やシステム生物学、さらには情報生命科学といった、生物学の中でも非常に先鋭的なものだ。