第9回 「食」にまつわる健康情報との付き合い方は?

 さて、栄養素、食材、食事パターンについてそれぞれ見てきた。

 すべてにおいて「すっきり解決!」というわけにはいかなかったと思うが、そういうすっきりしなさ加減も含めて味わっていくしかなさそうだというのがぼくが得た感触だ。

 最後の最後に、こういった研究すべてに関わることとして、今村さんが最近、問題視していることに触れておこう。個別の研究というよりは、研究をめぐる風潮とでもいうべきことだ。

 一言でいえば、「メタアナリシスについての懸念」だ。

「まず、メタアナリシスや系統的レビューは、既存のエビデンスをまとめているので高い価値があるとされていますが、栄養疫学の場合それでも良質とは限らないんです。そもそも方法が誤っているものもありますし、同じトピックについても複数のメタアナリシスがあって、それぞれ結論が食い違うということもあります。例えば、米国栄養学会誌の2014年7月号では、ナッツの摂取と糖尿病・循環器系疾患に関するメタアナリシスの論文が3つ同時に掲載され、それぞれ結果が異なっていました。さらにお米の話のように一つの疾患との関係だけが目立ってしまって、その結果を外挿して拡大解釈してしまう危険もあります」

 それにしても、「そもそも方法が間違っている」論文が世に出ることがあるのだろうか。こうなると、ぼくたちは何を信じればいいのかさっぱりわからない。

何を信じればいいのだろうか?
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「実は、私は、論文誌から頼まれる査読をできるだけするようにしています。勉強するいい機会なんですよ。世の中に出ていない情報にいち早く触れられるわけですし。それで、栄養疫学だけでなく、他の分野の疫学論文の査読も増えてきて、だいたい週に1本くらいは見ていると思います。その中で痛感するんですが、本当に論文の質はピンからキリまであります。それで、解析がずさんだったり、そもそも間違っているんじゃないかと指摘してリジェクトになった論文が、しばらくたって別の論文誌にそのまま掲載されていたりするんですよ」

 これが、「方法が間違っているメタアナリシス」が世に送り出されてしまう仕組みの一端だ。リジェクトされた論文を、そのまま掲載してしまうような別の論文誌がある、というのである。