第7回 「お米はダメ」「地中海食はいい」のゆがみ具合

 なお、「白米か玄米か」を気にしている知人にこの件を告げたところ、「どちらを食べていいのか分からない」と叱られた。「白米は悪い」と信じており、「玄米もよいかどうか分からない」としたら、何を食べていいのか分からなくてパニックに近い感覚になるという。そこで、ぼくは「当面は今の習慣のままでいいのではないか」と答えておいた。前にも書いたとおり、ぼくたちは人類史上最高水準の長寿を実現している。「今のまま」をもう少し続けたからといって、バタバタ倒れてしまうわけではない。はっきりと分かったリスクは避けるべきだし、ベネフィットは享受すればいいけれど、分からないものに振り回されるのは馬鹿げている。

 今村さんが栄養疫学者としての出発点からかかわってきた「食事パターン」について。

「地中海ダイエット」「低炭水化物ダイエット」「日本食」について、できるだけ簡潔に聞いていきたい。

 よく日本では、●●食を食べるのがヘルシーだというようなブームがある。最近では、「地中海ダイエット」「地中海食」を推奨する人がかなりいると思う。

 文字通り、地中海に面したイタリア、スペイン、ギリシャなどで食べられているもので、オリーブオイル、野菜、果物、ナッツ、魚介類などを多めに取る一方で、肉類の摂取は少ない、というようなイメージだ。これが健康によいというのは、日本でも有効なのだろうか。

トマト、モッツァレラチーズ、オリーブオイルなどで作るイタリア南部カプリ島のサラダ、カプレーゼ。地中海料理というと、こんなイメージだろうか。

「まず地中海ダイエットというのが何なのかという問題があります。ユネスコが無形文化遺産に指定した地中海食は、モロッコからクロアチアまですごく広い範囲の国々にわたっていますし、研究の方もそれぞれ何をとりあげるのか違います。もともと心血管疾患の罹患率が低いギリシャのクレタ島の人たちの食習慣に注目して定義された後、研究者ごとに定義を修正しながら今日に至る感じです。ですので、『地中海食は身体によい』というのでなくて、『身体によいであろう地中海食はどれか』というのが妥当な表現ですね。たとえばクレタ島の人たちはお肉を摂取することが昔からわかっていたのですが、健康的な地中海ダイエットを考える際はむしろ摂取を制限してもらうというようになります。そして朝食がオリーブオイルをコップ一杯だけだったり、昼間からお酒を飲んだり、エスカルゴをよく食べたりとクレタ島だけでもバリエーションが伺えます。そんな多様性をよそにわりと恣意的な判断もあって地中海ダイエットは定められています」

 さらに具体的な例として、今村さんはスペインの食を挙げた。