第4回 「甘い飲み物は体に悪い」のウソ?ホント?

「イギリスではこれからの10年で260万人が新たに糖尿病になると推定できるのですが、加糖飲料の消費を考え合わせて当てはめてみると、そのうち10万人ぐらいが加糖飲料のせいで発症するかもしれないということになります。つまり、加糖飲料を飲まなければ糖尿病を予防できるかもしれない人たちがそれだけいるということですね。アメリカだともっと糖尿病のリスクが高く加糖飲料の消費も多いので、今後10年のうちに200万人くらいの人たちが加糖飲料の摂取によって糖尿病になるかもしれないと推定できました。何%リスクが高いとか言うよりも、こういうふうに実社会と関係する数字を出してみると、具体的な政策などを考えやすいとされています」

 糖尿病だけではなく異なる疾患でも質の高いエビデンスが出るのが待たれるものの、こうした研究や肥満に関するエビデンスをもとに、世界保健機関(WHO)は、この論文が出た翌年の2016年から「砂糖税」なるものの導入を推奨している。これはソフトドリンクに砂糖を入れる時に加算されるもので、たとえば、コカコーラを伝統的なレシピに従って砂糖を使って製造し続けると、砂糖税の分だけ値上がりすることになる。そして、イギリス政府をはじめ欧州の多くの国が、実際に「砂糖税」を導入することになった(イギリスでは2018年4月から実施)。

 疫学研究による証拠をきちんと作り、その上で政策に反映させるという意味で、今村さんのMRC疫学ユニットは良い仕事をしたと評価されるべきだろう。この政策が続いた後、実際にどれくらい糖尿病や肥満を減らせたか注目したい。

 一方で、ダイエット飲料とフルーツジュースはどうだろう。

「実は、人工甘味料の飲料と、フルーツジュースも正の相関、つまり見かけ上、糖尿病のリスクが高そうな結果が出ました。でも、それらは証拠が弱いと考えています」

 論文を見ると、人工甘味料のソフトドリンクを飲んでいる人は8%リスクが高く、フルーツジュースを飲んでいる人は7%リスクが高いというように読める。砂糖入りのソフトドリンクよりは穏やかだが、有意な結果が読みとれる。これらのどこが「証拠が弱い」のだろうか。

「まず、人工甘味料を使ったダイエット飲料ですが、いろんな解析をしていって、太っている人ほど人工甘味料のダイエットコークなどのダイエット飲料を飲んでいる傾向があると判断しました。それを加味すると、たとえ正の相関があっても、強いエビデンスがあるとは言えないというのが結論です。これについてはウェブで読める補遺(Supplementary Material)に詳しく書きました(※4)」

 この補遺は26ページにも及ぶもので、印刷される論文ではつくせない議論が存分に行われている。ダイエット飲料を飲む人に太っている人が多いとすると、肥満はそれ自体大きな糖尿病リスクなのだから、ダイエット飲料がいけないのか、肥満がいけないのか分からなくなる。その点を考慮すると「正の相関」のエビデンスは弱いということが分かった。

 では、フルーツジュースの方はどうだろう。

(※4)補遺(Supplementary Material)PDFファイル
https://www.bmj.com/content/bmj/suppl/2015/07/21/bmj.h3576.DC1/imaf023070.ww1_default.pdf