第4回 「甘い飲み物は体に悪い」のウソ?ホント?

「出版バイアスへの対処方法があるとなると喜ばしいように思われるかもしれませんが、私はそれほど信用していません。すべての論文が一様に「出版バイアス」の影響を受けているとしたら、『ごっそり欠けている領域』を判断することがそもそも不可能ですから。こうした問題は各研究グループが結果を導いて発表した論文を基に行うメタアナリシスの宿命ですね」

 それでは、こういったことが「宿命」なら、受け入れるしかないのだろうか。なんらかのうまい方法はないのだろうか。

「今説明したようなメタアナリシスは、すでに行われた解析結果、論文を振り返るので『後ろ向きのメタアナリシス』と考えることができます。その一方で『前向きのメタアナリシス』と呼ばれるものがあります。複数の研究グループが協力して、同じ仮説について、共通項のあるデータを持ち寄って、もっとも妥当と考えられる解析を議論して結果をまとめて論文にするというものです。そのやり方なら、出た結果によって各研究グループが独自に解釈したり論文を発表したりすることはありません。もちろん元になるコホート研究の疫学的な問題などは抱えたままになりますが、それでも、もっとも出版バイアスの少ない、統合されたエビデンスを提供できると考えられています」

 最近、医学や隣接分野の研究を、事前登録する動きが広がっている。研究の結果が出てから公表するかどうか決めるのでなく、研究グループの見込みとは違う結果が出ても、その内容を封印してしまわないようにする工夫だ。それに加えて、最初から複数の研究グループ、複数のコホートなどからのデータを統合していくことを意図する「前向きのメタアナリシス」というのは、なるほど価値がありそうだ。面会時ではあまり掘り下げられなかったが、今村さんも今現在そういったプロジェクトに参加し論文も出している(※2)(※3)。

 議論の本筋に戻る。なんとなくでもいいのでどんな作業をしたのかイメージした上で、論文の結論に進もう。

「比較的はっきりとした結果が出たのは、加糖飲料です。日本からのエビデンスは弱いですが、毎日、コップ1杯、250ミリリットルの加糖飲料を飲んでいる人は、妥当な数字としては平均で1.1倍ちょっと糖尿病のリスクが高かったというものです。つまり10%くらいリスクが高いのです」

 加糖飲料を飲んでいる人ほど、10%リスクが高い。それをぼくたちはどう捉えればいいのだろうか。個々人の考え次第では「気にしない」こともありうると思う。しかし、少なくとも欧米の公衆衛生政策の側からは、無視し難い。

各研究で約250 mlの加糖飲料を毎日飲んでいた人と全く飲んでいなかった人の糖尿病の推定発症率の比。そしてこれらを統合(メタアナリシス)したものが最下部の数字。1より大きい数字が得られ、「飲んでいた人ほどリスクが高かったという解釈となる。なお、「95%信頼区間」は確からしさの指標で、広いものほど不確かと解釈する。それぞれのデータにばらつきがあることもよく分かるだろう。(画像提供:今村文昭)
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(※2)Imamura F, Fretts A, Marklund M, et al. PLoS Med 15(10): e1002670
https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002670

(※3)Del Gobbo LC, Imamura F, Aslibekyan S, et al. ω-3 Polyunsaturated Fatty Acid Biomarkers and Coronary Heart Disease. JAMA Intern Med. 2016;176(8):1155.
https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2016.2925