第4回 「甘い飲み物は体に悪い」のウソ?ホント?

「最初の段階では2000件以上がヒットしまして、それらの中で、タイトルや要約を見ることで、不適切なものを除外していきます。たとえば、見ているのが加糖飲料ではなく、アルコール、コーヒーなど、ほかの飲料だったり、対象となる集団が子どもでほかの病気のリスクを見定める目的だったりといった研究は検討から外します」

 ここまでくると論文の数は33にまで減って、後はすべての論文を詳細に読み、ひとつひとつ研究に組み込めるかどうか検討していく。この段階まで来た後に除外された論文は、「他の論文に同じ集団のより適切な結果が含まれている」「データが不十分なので著者に連絡して提供を求めたが返事がなかった」といったものだ。

 そして、残った17の研究の内容を吟味した上で、それぞれにあるかもしれないバイアスや特記事項(たとえば、「加糖飲料とダイエット飲料」が区別されていない、など)を抽出し、妥当性のランクもつけていく。ここまでが「系統的レビュー」に相当する。

 系統的レビューの結果をまとめた要約表は、情報の宝庫だ。既存の研究をまさに一覧できるわけで、これだけでも一つの仕事として評価される。

 しかし、当然ながら、ここまで来たらこれらの研究をまとめるとどういう結論になるのか知りたくなる。それがメタアナリシスの作業だ。

 そこで、系統的レビューで整理された研究の成果を不確かさを含めて統合していく。もちろん第2回のエルカ酸のコホート研究で説明したように、データを歪ませる様々な要因をできるかぎり取り除きつつ、結論に至る。

 個人的に印象的だったのが「出版バイアス(パブリケーションバイアス)」の扱いだ。

 まず出版バイアスという概念自体、興味深い。例えば、結論がはっきり出た研究のほうが、「よくわかりませんでした」という研究よりも、論文が発表されやすいかもしれない。通説を補強する結果のほうが、相反する結果よりも取り上げられやすいかもしれない。著者自身やその研究グループが以前に出した結論と相反する内容の論文は、そもそも投稿されにくいかもしれない。こういった偏りがあるなら、系統的レビューやメタアナリシスの結果が歪んでしまうだろう。そういったことが出版バイアスと呼ばれている。

 未公表の論文やデータを部外者が見つけることは難しいから、どうしようもないのではないかと考えられる。しかし、驚くべきことに、これにはいろいろな対処法が考案されている。単純化して概念だけ示す。

 例えば、統合する論文の中のデータをまとめてプロットし、その分布に不自然なところがないか確認する手法が開発されている。研究の結果はばらついて当然で、そのばらつきの中で、「メリットもデメリットもなし」だとか、研究としてのインパクトが乏しいものが、結果的に発表されずに終わったとしたら、分布の中でごっそり欠けている領域があるはずだ。もしも、そういった領域がはっきり見つかれば補って解析することができる。また、見当たらなければ出版バイアスのエビデンスはないといえる。

 ぼくはこういう手法にかなり感心してしまったのだが、今村さんは慎重な見かたをする。