そして、ここまでが社会集団の観察だったとすると、もう一歩、踏み込んで「実験」の域に達した研究デザインとして〈介入研究〉がある。特に、〈ランダム化介入研究〉、ちょっとむずかしい書き方をするなら〈無作為化比較対照試験(RCT)〉は、信頼性が高いとされる。たとえば、薬剤なりサプリメントなりの効果を知りたければ、研究対象になる集団を、本物や薬剤やサプリを与えるグループと、目的の成分が入っていない偽薬を与えるグループに無作為に分けて恣意的な偏りを排する。その際、医師や研究者の側にも、誰がどちらのグループに入っているのか分からないようにする二重盲検法が使われればなおよい。

 ランダム化された介入研究の結果はとても重く扱われるものの、単一の研究では心もとない。複数の研究が違う結論を導くこともある。そこで、その分野の研究が増えて成熟してきたら、信頼できる研究を一定の基準と手続きで抽出してまとめる〈系統的レビュー〉や、データを統合して分析する〈メタアナリシス〉が試みられる。この結果は、一般にはとても強いエビデンスとされる。

 今、話の流れとして、介入試験を統合するものとして系統的レビューとメタアナリシスに触れたが、実はこの説明だけだと少しミスリーディングだ。というのも、複数のコホート研究や症例対照研究を統合する系統的レビュー、メタアナリシスもあるからだ。介入試験ができない課題も多く、その場合は、コホート研究や症例対照研究のメタアナリシスがとても重要視される。

 以上。駆け足で解説終わり。

 こういったエビデンスレベルを強調しすぎることには弊害もあり、濫用は注意であることを説明した端から申し添えておく。研究デザインには、解き明かしたい課題によって向き不向きがあるので、そういったことを考慮せずに、ただ「コホート研究ではないから信用できない」(症例対照研究の方が向いている場合がある)とか、「ランダム化介入研究(RCT)などの介入試験ではないから信用できない」(介入試験をすること自体が非倫理的である場合など、研究そのものが行えない)というような人がいたらそれはおかしい。「エビデンスレベル」の概念だけが独り歩きすると、変なことが起こりがちだ。

 研究分野によっても特有の事情があり、栄養疫学固有の難しさについて、今村さんはこんなふうに言う。

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