カナダのなかのフランス ──ケベック

 中央広場に戻ると、たくさんの観光客がいた。シタデルに駐屯するカナダ第22連隊の衛兵交代式が行われるのだという。なるほど、多くの人は歴史ツアーよりもこちらの方を目当てにやって来るのだなと感心しながら、フェアモント・ル・シャトー・フロントナックがよく見える位置を陣取り、カメラを構えた。

カナダで最大のシタデル(要塞)は、18世紀半ばから建設中だったフランスの城塞を、イギリスが受け継ぎ、19世紀半ばに完成した。現在も軍事施設として、カナダ陸軍第22連隊が駐屯している。
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 黒いクマの毛の帽子に赤い制服を着た兵隊たちが現れ、楽団が奏でる音楽に手足の動きを合わせながら、広場を行進する。途中、連隊のマスコットである本物のヤギが登場したりもした。イギリス様式でありながらフランス語で指令を出すあたりがいかにもケベックらしいなと思いながら、たくさんの写真を撮った。

 ロウワー・タウンへ行ってみることにした。アッパー・タウンとロウワー・タウンは、フニキュラーと呼ばれる箱形のケーブルカーで結ばれている。でもそれには乗らず、中央郵便局の手前から延びる急な階段を下りていくコースを選んだ。途中、北米で最も古い繁華街プチ・シャンプラン通りを一望できるベストスポットがあるからだ。案の定、そこには何人もの観光客がおり、眼下の通りにカメラを向けていた。「首折り階段」と呼ばれる急な階段を下りて、ロウワー・タウンへと足を踏み入れる。

 かつてこの界隈には、交易所や優雅な邸宅などが軒を連ねていた。今ではそのような生活の気配は薄れ、ギフトショップやレストラン、画廊など、観光客目当てのお店ばかりが並んでいる。

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ロウワー・タウンには、2つの壁画がある。プチ・シャンプラン通りにある壁画「ケベコワの下町庶民の生活画」と、モンターニュ通りを下った所にある壁画「ケベコワの壁」。騙し絵でもあり、開拓者ジャック・カルティエ、サミュエル・ド・シャンプランがさり気なく登場している。右は、この地区に近年誕生した傘路地。

 ひときわ目を引いたのが、3階建ての建物の壁に描かれた巨大な壁画。「ケベコワの下町庶民の生活画」と呼ばれているこの壁画は、1999年、21世紀の橋渡しとなるミレニアム・イベントの一環で生み出されたのだという。フランスのリヨンから6人の画家を招待し、ケベックからも6人の画家がサポートとして加わり、3カ月半かけて描かれた。

 18~19世紀の暮らしの様子、ケベコワ(ケベック州で話されるフランス語)を話す人々の仕草が丁寧に描かれているので、まるでにぎやかな話し声が聞こえてくるようだ。何十分も見入ってしまった。

 ガラス細工のお店で少し時間を潰した後、ケベック・シティで最も好きな場所、ロワイヤル広場へと向かった。美しい石畳に覆われたテニスコート2枚分ほどのこの広場は、シャンプランが初めて植民地住居を建てた場所として有名だ。そのため「ケベック・シティ発祥の地」とも呼ばれる。

 元フランス国王ルイ14世の胸像の脇に立ち、広場の東側にある北米最古の教会、勝利のノートルダム教会にカメラを向けた。以前、この教会の冬の写真が写真集『SILENT NIGHT』の表紙を飾ったことがあるので、今回も撮影に気合いが入る。