カウボーイの祭典 ──アルバータ

 土曜日の夕方6時からロデオが行われるという。早速、町のはずれにある競技場へ行ってみると、観客席のひな壇には既にたくさんの人が集まっていた。観光客は一人もおらず、地元の人ばかりだ。周りで子どもたちがはしゃぐ村祭りのような雰囲気が漂っていたが、奥には救急車がスタンバイしていて、ちょっとした緊張感もあった。

かつて狩りを終えたカウボーイたちが、誰が一番暴れ馬にうまく乗りこなせるかを競ったのがロデオの始まりとされている。数ある種目のなかで最も迫力のあるベアバック・ランディング。半数以上の人が馬から振り落とされる。途中、ポニーや羊の背に乗る子ども向けの種目もあり、会場は和やかな笑いにつつまれていた。
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 まず、跳ねる馬に男が8秒間またがり、その乗りこなしで採点されるベアバック・ランディングが競われた。ガタンと勢いよく鉄のゲートが開き、男と馬がアリーナへ放たれる。馬が勢いよくジャンプした直後、男は馬から振り落とされ、激しく地面に叩きつけられた。観客から「おおー」というどよめきと拍手が巻き起こる。

 数分後、別の男と馬がアリーナに放たれた。この馬も勢いよく飛び跳ねるが、男は片手でバランスを取りながら巧みに暴れ馬を乗りこなしている。8秒後、ピックアップマンと呼ばれる男たちが興奮した馬に近づき、男を救出した。最後まで落馬しなかった彼は随分と得意げだ。観客からは拍手喝采、誰もが大興奮していた。

 その後も競技は続いた。馬の上から子牛に飛びついて倒すステア・レスリング、子牛にロープをかけ、足をロープで縛り上げるタイダウン・ローピング……。後半、カウガールと呼ばれる女性たちが登場し、会場内に三角形に配置したたるの間を馬で走りぬけるバレル・レーシングが行われた。馬を操る彼女たちの勇ましさに陶酔した。

 会場全体が夕陽につつまれる頃、すべての競技が終わった。いつもの静かな風景とは違い、動きのある被写体にカメラを向けたことで満足感にひたることができた。

 カナディアン・ロッキーの玄関口カルガリーでは、毎年7月に、カウボーイの祭典「カルガリー・スタンピード」が開催される。世界各国から100万人以上の観光客が訪れるビックイベントだ。

 世界上位20人のロデオ・アスリートたちが行うベアバック・ランディングや、雄牛を乗りこなすブル・ランディング、幌馬車を引いてタイムを競い合うチャックワゴン・レースなど、迫力ある競技が次々と行われ、巨大スタジアムに集まった観客たちは熱狂する。

 生まれて初めてロデオを間近で見て、たまらなくこの世界に引かれてしまった。いつの日か、カルガリー・スタンピードにもカメラを向けてみたい。そんな夢が芽生えはじめていた。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

吉村 和敏(よしむら かずとし)

1967年、長野県松本市生まれ。田川高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビュー。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表する。絵心ある構図で光や影や風を繊細に捉えた叙情的な風景作品、地元の人の息づかいや感情が伝わってくるような人物写真は人気が高く、定期的に全国各地で開催している個展には、多くのファンが足を運ぶ。近年は文章にも力を入れ、雑誌の連載やエッセイ集の出版など、表現の幅を広げている。作品集、写真展、テレビ出演等多数。2003年 カナダメディア賞大賞受賞、2007年 日本写真協会賞新人賞受賞、2015年 東川賞特別作家賞受賞。写真集に『プリンス・エドワード島』『「フランスの最も美しい村」全踏破の旅』(講談社)、『BLUE MOMENT』『MORNING LIGHT』(小学館)、『光ふる郷』(幻冬舎)、『あさ/朝』(アリス館)、『こわれない風景』(光文社)、『ローレンシャンの秋』(アップフロントブックス)、『林檎の里の物語』(主婦と生活社)、『PASTORAL』(日本カメラ社)、『Sense of Japan』(ノストロ・ボスコ)、『Shinshu』(信濃毎日新聞社)、『雪の色』(丸善出版)などがある。