カウボーイの祭典 ──アルバータ

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現代のカウボーイは、牛をトラックやトレーラーで牛舎から牧場へと運んでいる。それでも牛の駆り集めや馬の調教の仕方など、古い技術は確実に受け伝えられている。大都市からこの地に移住し、畜産業を始める若者も少しずつ増えているらしい。

 大都市カルガリーで暮らしていた夫妻は、結婚と同時にこの地に移住し、夢だった畜産の仕事を始めたという。今年で9年目。900エーカー(約364万平米)の牧場を所有しているが、その大半を人に貸し、160エーカー(約65万平米)の牧場で90頭の牛を飼育しているらしい。数の多さに驚いていると、レイチェルさんは笑いながら言った。

「400頭以上の牛を所有していないと、牧場で生計を立てていくのは難しいです。主人は今でも石油関係の仕事を続けています」

 やがて帰宅したご主人のタイラーさんを交え、牛を放牧しているトレイルスエンド・ランチに連れて行ってもらった。

 牧場に着くと、二人は愛馬ターボとジェットにさっそうとまたがった。そして遠くを眺め、草原に散らばる牛の集め方を話し合っている。夕陽に照らされた二人の姿が美しい。まるで映画のワンシーンを見ているようだった。

 馬を操って草原を駆けていく二人を走って追いかけた。しかしすぐに息が切れる。200ミリの望遠レンズに切り替え、二人の姿をファインダーで捉えることにした。バラバラだった牛たちが徐々に一カ所に集まっていく。牛の誘導にはルールがあるらしいが、ただ見ているだけではその方法がわからない。

 その日の夜、家で夕食を頂きながら色々な話を聞いた。レイチェルさんは時々スマートフォンの画像を見せながら、ヘイベルと呼ばれる干し草のロールの作り方や杭打ちのやり方、有刺鉄線の張り方、牛の焼き印押しや出荷のことなどを教えてくれる。畜産には、山ほど仕事があるらしい。

 カウボーイとは、かつて馬にまたがりメキシコや米国西部の辺境の地に赴き、原野で野生化していた牛を集め、市場がある街へと届ける仕事を生業としていた人たちのことをいう。今の畜産業に携わる人たちのライフスタイルとはだいぶ違うが、何種類ものカウボーイハットがかけられ、拍車がついたブーツが整然と置かれた室内で二人の話に耳を傾けていると、この地で暮らす人々の心の中にとけ込むカウボーイ・スピリットが何となく見えてくるような気がした。