カウボーイの祭典 ──アルバータ

ホースシーフ谷から、レッド・ディア川の浸食によって生み出された地形を一望することができる。バッドランドでは1889年から継続して発掘調査が行われており、これまでに55種、400を超える恐竜の化石が見つかった。
[画像のクリックで拡大表示]

 ホースシーフ渓谷の見晴台からの眺めも素晴らしかった。すり鉢状に浸食された大地が、地平線の彼方まで続いている。斜めに切れ込む壁は幾重もの層を描き出し、克明に等高線が描かれた地図のようだ。米国のグランド・キャニオンに似た絶景がここカナダにも存在していることが、何だかうれしかった。

 この夏は、ロッキー山脈周辺の山岳地で、雷の自然発火による大規模な山火事が発生していた。偏西風に乗って流れてきた煙によって、空全体がうっすらとかすんでいる。皮肉にもこの視界の悪さが、バッドランドの風景をミステリアスに見せることに一役買っていた。

 風景作品を生み出した後、じっくりと目の前の世界を凝視した。そして、恐竜映画の映像をヒントに、この地で彼らが悠々と歩き、草木を食べ、時に争う姿を頭の中で思い描いてみた。過去へと簡単にタイムスリップできるのも、カナダの魅力の一つだろう。

 プレーリーと呼ばれる大平原地帯には、牧畜業に携わる人々が多く暮らしている。カナダに家畜としての牛馬がやって来たのは19世紀中頃だ。カナダ大陸横断鉄道の労働者やゴールドラッシュで一攫千金を夢見た人々、治安を守る騎馬警察隊らの食用として牛肉の需要があった。この地で牛を育て肉を売る仕事は、英国やカナダ東部の裕福な地主と、米国から流れてきたカウボーイによって、急速に発展していった。

 今でも大切に受け継がれている畜産業の世界。そして現代のカウボーイたち。大平原を巡っていたら急に興味を覚え、カメラを向けてみたくなった。カルガリーの南にあるナントンの郊外で畜産業を営むハーバート家を訪ねてみる。突然の訪問にもかかわらず、奥さんのレイチェルさんは快く迎え入れてくれた。