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バンクーバーから程近いアボッツフォードに本拠地を置くベルギー・チョコレートの人気店「チョコラタス」。バンクーバー店はここパブリック・マーケットにある。チョコレートを知り尽くした店員のユージン・クレイルさんが、クリスマスプレゼントを選んでくれた。

 バンクーバーの人気スポット、グランビル・アイランドにあるパブリック・マーケットに立ち寄ってみることにした。ここは精肉や魚、野菜など、新鮮な食材を手に入れることができ、地元の人はもちろんのこと、観光客にも愛されている。

 マーケットに入ってまず目についたのが、色とりどりの野菜とフルーツだった。中国人のオーナーから威勢のいい掛け声が聞こえてくる。その横にはチーズ専門店が並び、さらにその先には魚屋があった。氷が敷き詰められたパレットの上に何種類もの鮮魚が所狭しと並んでいる。店主のデイブ・モアヘッドさんが教えてくれる。

「このマーケットが産声を上げた1979年から営業を続けているのはうちと、あともう一軒だけ。毎朝届く近海で捕れた魚は、飛ぶように売れていく」

 マーケットの中央には、30ほどの小型ブースがあり、陶芸や絵画、アクセサリーなど様々な分野で活躍するアーティストが、自分で作った作品を販売していた。中国から取り寄せた石をカービングして落款印を製作するダニー・パック・ビウ・ルイさんは、ここで19年もショップを構えているという。数年前、韓国からカナダに移住した陶芸家ソフィア・キムさんは、ホワイトバーチ(白樺)からインスピレーションを得て生み出した作品を所狭しと並べ、まるでギャラリーのような空間を演出していた。

 バンクーバーは、人口の増加に伴い、巨大なショッピングモールやスーパーが次々と誕生している。しかしこのようなマーケットが根強い人気を誇っているのは、企業から人ではなく、人から人へと物が流れていくからだ。日本の都市も、見習う点がたくさんあるような気がした。

バンクーバーのダウンタウンには、毎年大きなクリスマス市ができる。2018年からは「オーロラ・ウインター・フェスティバル」という光の祭典が始まった。しかし住宅街に一歩足を踏み入れれば、静かなクリスマスの世界も楽しめる。
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 その日の夜、イーストサイドの住宅街に足を運んでみることにした。この地区には、映画業界で装飾を担当する人たちが多く暮らしていて、目を引くイルミネーションハウスが多いことで知られている。

 クリスマスの飾り付けにはちょっとした逸話が残されている。かつてこの地区で、孤独死をしたお年寄りがいた。そんな身よりのない人たちを救うために始めた住人たちの募金活動が、クリスマスのイルミネーションハウスにつながっていったのだ。美しい電飾は人を集める効果がある。しかし、飾り付けは年々エスカレートし、見物客が増えたことで周辺道路の交通渋滞が発生するようになった。今はブームが去り、わざわざイルミネーションハウスを見に来る人はいない。

 トリニティ・ストリート沿いに、数軒のイルミネーションハウスが建ち並んでいた。ダウンタウンの装飾とは違い、生活感が溶け込んだ素朴な美しさに満ちあふれている。氷点下の寒さを忘れて、何度もカメラのシャッターを切った。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

吉村 和敏(よしむら かずとし)

1967年、長野県松本市生まれ。田川高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビュー。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表する。絵心ある構図で光や影や風を繊細に捉えた叙情的な風景作品、地元の人の息づかいや感情が伝わってくるような人物写真は人気が高く、定期的に全国各地で開催している個展には、多くのファンが足を運ぶ。近年は文章にも力を入れ、雑誌の連載やエッセイ集の出版など、表現の幅を広げている。作品集、写真展、テレビ出演等多数。2003年 カナダメディア賞大賞受賞、2007年 日本写真協会賞新人賞受賞、2015年 東川賞特別作家賞受賞。写真集に『プリンス・エドワード島』『「フランスの最も美しい村」全踏破の旅』(講談社)、『BLUE MOMENT』『MORNING LIGHT』(小学館)、『光ふる郷』(幻冬舎)、『あさ/朝』(アリス館)、『こわれない風景』(光文社)、『ローレンシャンの秋』(アップフロントブックス)、『林檎の里の物語』(主婦と生活社)、『PASTORAL』(日本カメラ社)、『Sense of Japan』(ノストロ・ボスコ)、『Shinshu』(信濃毎日新聞社)、『雪の色』(丸善出版)などがある。

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