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静かな海を望む広大な敷地内に、土を盛って造った当時の住居が復元され、一般公開されている。バイキングにふんしたスタッフが、当時の暮らしぶりを丁寧に説明してくれる。まるで大昔にタイムスリップしたような気分になる。

 カナダの最東端に位置するニューファンドランド&ラブラドール州は、カナダで4番目に大きな州で、約53万人が暮らしている。日本では、ニューファンドランド犬、ラブラドールレトリーバー犬の故郷としてなじみが深い。

 大西洋の荒波に洗われる海岸線は変化に富み、内陸部は未開の針葉樹林帯が広がっている。島の南東沖はグランドバンクスと呼ばれる世界有数の好漁場。海沿いの町や村で暮らす人々は、長い間、タラ漁により生計を立ててきた。豊かな海に導かれるように鳥やクジラが多く集まり、ホェールウオッチングのベストスポットとしても知られている。

 ニューファンドランドは、その名の通り「新たに見出された土地」だ。北欧の伝承文学『サガ』に、アイスランドのバイキングの一団が北の海を航海し、山ブドウが豊かに実る大地「ヴィンランド」を発見したとある。このヴィンランドがどこにあるかは長い間謎だったが、ノルウェーの歴史学者がこの島の北端にバイキングの集落跡を発見。1961年から発掘調査をはじめ、先住民が使用しない鉄製品が出土したことから、アメリカ大陸に渡った最初期のヨーロッパ人の遺跡とされた。現在、集落のあったランス・オ・メドー国定史跡では、数棟の建物が復元され、一般公開されている。1978年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録された。

 島の北東部にあるボナビスタ岬も、カナダの歴史を語る上で重要な場所となっている。イタリア人の航海者ジョン・カボットは、イギリス王ヘンリー7世の命を受け、北の海を旅して新大陸への新たなルートを探していた。1497年、カボットはボナビスタ岬に上陸する。コロンブスの新大陸発見からわずか5年後のことだ。その後、1583年、航海者ハンフリー・ギルバートがこの島をイギリス国王の領土と宣言、大英帝国の植民地第一号となった。

 豊富なタラの漁場グランドバンクスを発見したとの情報も、ヨーロッパ中を駆け巡った。多くの漁師たちが新大陸へと渡り、この島の人口は急速に増えていく。最終的に、イギリスとフランスという二大強国による植民地獲得競争に発展していった。

 そんな始まりの歴史がちりばめられたニューファンドランドは、北米で暮らす人々にとって、「いつかは必ず訪れなければいけない地」となっているらしい。日本人の富士登山と同じ感覚かもしれない。

 この地を旅する多くの旅行者は、ノバスコシア州からカーフェリーで島の南西岸にあるポート・オ・バスク港に渡り、ランス・オ・メドー国定史跡から旅を始める。グロースモーン国立公園、ボナビスタ岬を訪れ、州都セントジョンズにやって来る。そして最後に、北米大陸の最東端ケープ岬の見晴らしの良い崖の上から、大西洋の彼方にあるヨーロッパに思いを馳せるのだ。

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